2004年06月29日(火) 21:46 0
JRHAセレクトセールの開催が10日後に迫った。サンデーサイレンス産駒のいない初めてのセールということで、特に海外のバイヤーやメディアがどう反応するかが懸念されていたが、英語版カタログへのリクエスト数は例年とほぼ同じ水準にある。更に、海外メディアの寄せる関心はむしろ例年以上で、現在のところは『SS産駒抜き』もさほどの影響を及ぼしていないように思う。
この市場が既に世界の競馬カレンダーの中で完全に定着したこともあるだろうが、01年のセールで購買されたサンドロップがクラシックの英1000ギニーで僅差の2着に好走したり、02年のセールで購買されたフサイチペガサス産駒のワザリングハイツがメイドンで良い勝ち方をしたりと、海外におけるセール出身馬の活躍があったことも大きいと思う。こうした結果を見た海外の関係者が、日本産馬の実力を評価した上で今年のセールに興味をもってくれているとしたら、非常にうれしいことだ。
6月8日付けの紙面でセレクトセールのプレビュー記事を掲載したのが、ここ3年ほど毎年記者が取材に訪れている英国のレーシングポストだ。G1チーヴァリーパークS勝ち馬シーズアン(上場番号211番)を母に持つ牡馬を筆頭に、近親に欧州における活躍馬たちがいる血統の馬を中心に、目ぼしい上場予定馬を紹介している。
一方、6月3日号で、注目の上場馬の筆頭に日本の年度代表馬エアグルーヴを母に持つ牡馬(上場番号68番)を持ってくる記事を掲載したのが、アメリカのサラブレッドタイムス(電子版)だ。母が活躍馬であるだけでなく、姉にも日本のG1馬がおり、市場の人気を集めそうだと書いている。ちなみにサラブレッドタイムスは、今年初めて、記者をせり会場に送り込み、2日にわたるセールをじっくりレポートする態勢を整えている。
同じアメリカのサラブレッド・デイリー・ニュースは、これも6月3日付けで掲載したプレビュー記事の中で、母エアグルーヴの牡馬とともに、上場番号10番の母アリューアメントの牝馬を注目馬の筆頭に挙げている。母がフランスの重賞勝ち馬で、祖母はアイルランドのオークスを制したクラシックホース。父も今年の2歳が初年度産駒となる注目の若手種牡馬キングズベストという、ファッショナブルな血統構成の馬だ。
このあたり、各媒体の担当者のセンスによって注目馬が分かれているのは、なかなか興味深いことだ。
外国人による購買がなければ、外国の競馬関係者が日本産馬の実力を目の当たりにする機会も極端に限られてしまうだけに、セールの今後を考えても、1頭でも多く海外からのバイヤーが購買してくれることを期待したい。
合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。