セレクトセール2004

2004年07月13日(火) 20:18

 サンデーサイレンス産駒の上場がないセールとしては初めてとなる、セレクトセール2004。初日から国内市場の取引額を大きく更新する4億9000万円(父ダンスインザダーク、母エアグルーヴの牡馬)もの高馬が飛び出し、ここだけはまったく不況知らずの世界だ。

 7月12日、13日の両日にわたり苫小牧市・ノーザンホースパークを会場に開催されたセレクトセールは1998年に始まり、今年で7回目となる。今や完全に日本の頂点に君臨する「独占市場」としての地位を確立した感がある。

 初日は、159頭が上場され、落札122頭。総売上げは42億1943万円。売却率は牡が114頭中89頭の落札で78.1%。牝は45頭中33頭の落札で73.3%。トータルで76.7%と売却率、総売上ともに昨年の初日の数字を上回った。とりわけ、ダンスインザダーク産駒の好成績が目立った。

 「ポストサンデー」の座を狙うダンスインザダーク産駒は初日、13頭が上場され、10頭が落札。スターバレリーナの牡も、1億7100万円という高額で取引されたため、10頭の総売上げは税込みで9億8910万円にも上る。昨年までのサンデーサイレンス産駒にも匹敵するほどの平均価格となったのは驚きだった。

 競り合ったのは最終的に、「アドマイヤ」の冠名で知られる近藤利一氏と「フサイチ」の関口房朗氏。落札した関口氏のコメントは「今日の予算?無限大だよ」という強気のもの。競走馬の持つ魔力に魅せられたオーナーが互いにがっぷりと四つに組んだ時、セリはとんでもないところまで金額が上昇してしまう。それを図らずも現実のものとして目の当たりにした場内の関係者からどよめきが起こっていた。

 さて、二日目の市場がまだ終了していない時点でこの稿を書いているため、注目のダンスインザダーク産駒の上場をすべて見届けられていないのだが、初日同様、これまでのところでは相変わらず順調に落札されている。172番3300万円。181番2000万円。192番主取。201番3850万円。205番2億円(マンハッタンカフェの半弟、母サトルチェンジ)。223番3300万円。236番2700万円。260番2050万円。263番5800万円。(いずれも税抜き)

 ただし、JBIS発表の6月27日現在のリーディングサイアー(JRAサラブレッド全馬)によれば、ダンスインザダークは確かにトップを独走するサンデーサイレンスに次ぎ第2位の座に就いているものの、両者の間には埋めがたい落差がある。ポストサンデーを目指すためには、今後、いかに父の偉大な産駒成績に肉薄できるか、にかかっている。以前にも書いたことだが、サンデーサイレンスの産駒成績は、何を取ってもダントツだ。出走頭数、勝馬頭数、出走回数、勝利度数、入着賞金、アーニングインデックスにいたるまですべてである。ツルマルボーイの安田記念制覇により、これで2頭目のG1ホースを輩出したことになるとはいえ、現在のリーディング2位は出走頭数の多さ(サンデーの354頭に次ぐ186頭)による入着賞金の積算に負うところが大きい。アーニングインデックスを見た時、ベスト10のサイアー中、ダンスインザダークは下から2番目。この平均値の低さがやや気になる。

 ところで、セレクトセールは、今や圧倒的な“質の高さ”で、日本の生産界を完全にリードする存在となった。私事になるが、このセールの申し込み期限に合わせて、何頭もの当歳馬の写真撮影を依頼された。しかし、日高の中小牧場にとっては、まず上場権利?を獲得するまでの間に大きな障壁が待っている。事実上の「セレクト」セールなのだ。中途半端な生産馬では事前にふるいにかけられてしまうのである。

 この売れ行きを見れば、誰しも生産馬を上場させたくなるところだが、申し込みの段階で厳しい競争がスタートしている。と同時に、この市場に上場される当歳馬は文字通りの「高素質馬」として主催者から認定された存在なのである。

 毎年、この市場を見ていると「不況どこ吹く風」との感を深めるが、市場が日高に移った途端、現実の厳しさに引き戻されてしまう。「売れない」「安い」などのため息が今年も多くなるだろう。次週は、静内での市場が待っている。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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