時が来れば事は成就する

2016年02月11日(木) 12:00


池江調教師の言葉できさらぎ賞に出走させた意味がはっきりした

 あとは時を待つだけなのか。そう思わせるサトノダイヤモンドの勝利だった。これだけの馬を、このきさらぎ賞に出走させた意味が池江調教師の言葉ではっきりした。これまでの2戦は阪神の緩い馬場の二千米、3戦目は京都の千八百米の硬い馬場でコーナー2つと状況がちがっていた。かき込む走法で大丈夫なのか、速いタイムにでも対応できるか、それに二百米短い距離等々、その全ての課題に3馬身半差のレースレコードで応えたのだから、あとは時を待つだけと思ってもいい。ここまでたくわえた力があるのだから、時が来れば事は成就するだろう。

 さて、果たしてそうなるだろうか。時を待っているのは、他にもいるのがクラシック戦線、一瞬の休みもなく力をたくわえるものもいる。そう考えるのが普通ではないか。多くは、時の来るのを信じて力をたくわえ、その時を待っている。その時を待つ心は、春を待つ心にも似ている。静かにじっと何もせずにいるのではなく、確実に力をたくわえている。それがなければ、時が来ても事は成就しない。梅や桜の場合は、人間の力を超えた大自然の恵みを受け、それが大いなる力になっているのだが、多くは、ただひたすらの精進しかない。それに、類稀な素質が加わって、初めてその時を迎えることができる。サトノダイヤモンドのルメール騎手は、今回もライバルがいなかったと言っていた。だが、この段階で、それだけということはあるまい。たまたま、ここまでがそうであったということだ。まだ対戦していない逸材が、しっかり出番を待っている。こうでなければいけない。確実に進化している怪物にどう迫っていくか、当面はそこに興味が集中していく。時を待つものが多いほど、クラシック戦線は楽しくなる。

 時を待つと言えば、東京新聞杯を逃げ切ったスマートレイアーは、ちがった意味で時を待っていた一頭だった。寒さに弱いタイプということで、厳しい寒さの中でのレースは避けていたが、例年より暖かい陽気のせいか状態がよくなっていた。只一頭の牝馬の逃げ切りで、過去2度大敗したヴィクトリアマイルが面白くなった。加えて、精神面の成長もあったということで、時を待つ力も感じられる。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

関連情報

新着コラム

コラムを探す