心の奥底から沸き上がる願望

2016年02月18日(木) 12:00


メジャーエンブレムが叶える夢

 心の奥底から沸き上がる願望、これこそ夢を叶える前提となる。これが第一歩で、次にどう確信できるようになるかだ。懸念とか不安を持たずにどう明確な展望を描けるか、それができたら一歩実現に近づく。だが一方でその真価は、事の成否以上にそこに全力投球したという充実感の方にある。人生航路を大きく転換するとき、心機を新たに将来に立ち向かっていくのだと自分に言い聞かせるのだが、その行き着くところはわからない。それでもひたすら続けていく。夢を叶えるとは、そういう努力の先に見えてくる。

 メジャーエンブレムの田村康仁調教師の夢は、もちろん桜花賞制覇だが、もうひとつ別に強い思いを持っている。初めてGI制覇をもたらしてくれたメジャーエンブレムは、桜花賞を勝つことで別の願望を叶えてくれるのだ。第一回桜花賞は1939年に行われ、ソールレデイが優勝している。その勝ち馬を管理した田村仁三郎調教師は、祖父にあたるのだ。初めてクラシックを勝つなら、田村家に縁のある桜花賞をと先日も述べておられた。クイーンカップの圧巻の逃げ切りは、第一歩を大きく踏み出し、確信を抱いて明確な展望を描けた証しになり、一歩実現に近づけたということだ。「ゲートのときの集中力が良くなり、反応の良さも明らかに阪神JFのときとは違う」と述べていたが、抜群のスタートを決めていた。本番を考え控えるのかと見ていたが、そのまま先頭に立ち、後続に一度も影を踏ませず、直線はさらに突き放して5馬身も差をつけていた。ルメール騎手は後ろを振り返る余裕、まるで足慣らしをしているようだった。

「すごくリラックスしていて、長くいい脚を使ってくれた。距離はのびても大丈夫」と満足げに振り返ったが、堂々桜の主役の座についたメジャーエンブレムが、田村一族の皆さんの夢実現に大きく近づいたと言ってもいいだろう。心の奥底から沸き上がる願望が、どう実現していくか、見るものにとっても大きなテーマとなる桜花賞だ。そしてまた、まだ見えぬところで、密かに沸き上がる願望を抱き、明確な展望を描く人馬がいるのかもしれない。伏兵は、物かげに隠れてこっちを見ているとも言うから。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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