サマーセール終了

2004年08月10日(火) 19:20

 去る8月2日より5日にかけて静内で開催された「サマーセール」は、最終的に1031頭が上場され、294頭が落札、売却率にして24.48%、売上げ総額は16億5627万円(税込み)という結果となった。

 1010頭が上場、226頭の落札、売却率22.4%、総額13億5255万円余(税込み)という昨年の数字から比較すると、今年は総額、売却率ともに前年を上回る結果を残したことにはなるのだが、しかし、それでも全体では3割に満たない売却率。裏を返せば7割の馬が売れ残った計算になる。多くの生産者にとってはとても「売れた」という実感に乏しいセールとなったはずだ。

 私事ながら、4日に上場した私の生産馬も結局「主取」に終わった。まだこの程度は可愛いもので、中には3頭、4頭(あるいはそれ以上)もの生産馬を大挙連れてきて上場し、1頭も売れずに肩を落とす生産者がいた。今後のことを考えるといささか気分が滅入るところ。これより後は、自動的に10月市場へ期待を賭ける以外になく、さもなくば明年5月の「2歳トレーニングセール」あたりを視野に入れて、秋から冬にかけて育成牧場へ移動し、調教を始める作戦に変更するか、といったところだろう。いずれにしても、絶望感や閉塞感に襲われ、生産者のモチベーションは下がる一方である。

 なぜ、こんなに馬が売れないのか?それを説明するのは難しいのだが、やはり最も大きな要因は、地方競馬の低迷だろう。下がる一方の馬券売上げにより、レースの賞金や出走手当などもまたどんどん下落する現在の状況では、たとえ馬を持ちたくとも、まともな価格では購入できない、と考える馬主が大多数ではないだろうか。馬の価格帯によって入厩する競馬場に序列があったのは過去の話で、今では地方競馬に限って言うと、ほんの一部の競馬場を除き、後は「無料で馬を入手しても、維持費も満足に捻出できない」ほど“馬主経済”が悪化している。

 その分、中央競馬により多くの1歳馬が入厩すれば良いのだが、それとて、開催日数もレース数もまったく変わらないのだから、分母ばかりが増えるのには限度がある。総じて地方競馬はもちろんのこと、中央競馬にしても変わらないのは本賞金だけでそれ以外の目に見えない部分の経費は削減され続けているから、コストパフォーマンスが悪化していることだけは間違いなさそうだ。

 ところで市場でのこと、久しぶりに元新潟県競馬のS調教師に会った。周知の通り、新潟はすでに廃止され、S調教師も現在は「貯金を食いつぶす」毎日だそうである。今回はある馬主の依頼を受けて馬を探しにきたそうだが、そのS氏が言うには「まだ調騎会と県との話し合いがついていないので補償金を受け取っていない」というのである。もちろん、新潟県競馬廃止に伴う補償金の件だが、フィナーレとなったのが確か2002年1月のことだから、かれこれもう2年7ヶ月は経つ。それが未だに解決していないのは両者の主張に大きな隔たりがあるわけで、何ともやりきれない話である。おそらく、この種の問題は、今後さらに出現するであろう地方競馬場の廃止に伴い必ずまた出てくるだろうと思われる。

 むしろどことどこが廃止されるか、ということよりも「生き残れるのはどこか?」と数えた方が話は早そうだ。そして、そんな地方競馬の動向が、私たち零細生産者の今後を大きく左右することになる。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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