心機一転の姿

2016年03月03日(木) 12:00 12


中山記念、ドゥラメンテの完勝に

 過ぎたるを悔いず、常に、未来に顔を向ける姿、心機を新たにするその心機一転の姿を目の当たりにすると清々しい気分になる。また、真価は事の成否以上に、そのものに全力を注入したという充実感にあるとも言う。だが、勝って当然、さらにはその勝ち方にも注目が集まるとなれば、これは大変だ。

 こうした厳しい条件を突きつけられて勝ったドゥラメンテは、一体どんな思いだったのか。二冠馬という栄光に浴した直後に、両前脚の骨折という重い負担を背負い、骨片摘出手術をしたのが昨年の6月29日。全治6ヶ月という診断を受けながらも、9月末には騎乗運動を再開、じっくり段階を踏んで調教を重ねてきていた。こうした経過の中、目標を中山記念に定めていたのだが、さて、この事態をドゥラメンテはどう乗り越えていったのか。

 とても利発な馬でメンタル面の反動はなかったという関係者の言葉から、馬自身が状況を受け入れていて、これから先の断を自ら下していたように思えてならない。実際に馬場に登場した馬体を見て、誰しもが明らかに成長したと感じた。パートナーのミルコ・デムーロ騎手も心身の充実ぶりに安堵していた様子だった。レースではスタートよく飛び出し、いいポジションを占め、ずっと巧く折り合っていたし、あとは4コーナーをどう回っていくかだった。それほどでもなかったが、やはり不器用なところは感じられた。アンビシャスが迫ってきたときは、これはと思ったが、手前をかえるとぐんと伸び脚を見せ、不安は消え、クビ差のわりには完勝に映った。ゴール前物見をして詰め寄られたが、完全復活を叫びたくなった。未来に顔を向ける、心機一転の姿、この清々しい気分の先にあるものはとの期待、これはもう間違いない。こうなったら一緒に大きな夢を追い掛けようではないか。

 では、そのものに全力を注入したという充実感、これはどうなるか。中山記念で追いすがって敗れたアンビシャス、リアルスティールにこれを当てはめるには、まだ早い。同じ4歳馬同士、いずれも良くなるのはこれから。事の成否を問うのは時期尚早とみて、全力を注入した充実感を味わうのは、これからとしておきたい。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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