心配もまたよしの心

2016年03月10日(木) 12:00 15


今年の牡馬クラシックのストーリー

 歴史は繰り返すのか。父ディープインパクトが11年前に勝ち進んだのと同じ道を走って3戦全勝。これまでほとんど追うことなく2連勝してきたマカヒキは、頭がよくて折り合いに心配はないとルメール騎手は語っていたが、弥生賞ではスタートがあまり速くなく、途中から追い上げて行っても4コーナーではまだ8番手。先に先頭に立ったリオンディーズをとらえられるかどうか、そんな戦況に映った。リオンディーズはスタンド前でかかり気味となり、なんとかなだめていたが、久々の実戦でもあり、完成するのはまだ先とみるべきかもしれない。一方のマカヒキは、最後の300米がすごかった。これまでにない強さ、そう言い切っていい勝利だった。正攻法で動いたリオンディーズは、坂でも脚色が全く鈍らなかったのだから。いざ本番でどう戦うか、まだまだ分からない。

 何の心配もなく、何の憂いもなく、何の恐れもないことになれば、きわめて結構なことだが、実際はそうは問屋が卸さない。本当は、そこにある懸念をひたすら乗り切り、そこで得たものが大きいのだ。正攻法の競馬で戦ったリオンディーズの次がどうなるか。レース・レコードで差し切ったマカヒキに、次も同じ手があるかだ。心配もまたよしの思いがあれば、新しいものを考え出す転機になり力がわいてくる。今年の牡馬クラシック戦線にどんなストーリーを考えたらいいのか。

 あとは時を待つだけなのか、そう思わせたサトノダイヤモンドのきさらぎ賞の勝利があった。こちらもレース・レコード、時が来れば事が成就するばかりと映った。ルメール騎手はきさらぎ賞では、今回もライバルはいなかったと言っていた。その当事者が、マカヒキ、サトノダイヤモンドのどちらに騎乗するのか。どちらも3戦全勝、選択を迫られて出す結論が注目される。

 心配もまたよしの心で、正々堂々と出されたものに、声援を送りたい。ここまでは、本番を前にした前哨戦、あくまでもトライアルと捉えれば、様々な可能性を見出していいのだ。秘かに逆襲を誓う伏兵たちの存在の中から、レースの行方を左右するものがいないとも限らない。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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