週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2004年08月24日(火) 12:14

 8月22日(日曜日)にドーヴィルで行われたフランスにおける今季初の2歳G1モルニ賞は、1週間前に同じドーヴィルで行われた古馬のG1ジャックルマロワ賞の勝ち馬で、昨年のこのレースも制しているウィッパーの半妹ディヴァインプロポーションズが優勝。同一G1兄妹制覇を果たした。一方、前走G3カブール賞を快勝、英国の大手ブックメーカー「コーラル」が来年の2000ギニーで2番人気に支持するなど、高い評価を受けていたサンデーサイレンス産駒レイマンは2着に惜敗。G1制覇の夢はかなわなかった。

 ニアルコス・ファミリーによる、アメリカでの生産馬ディヴァインプロポーションズ。01年のキーンランド・ノヴェンバーセールで4000ドルという信じられないほどの廉価で売却してしまった兄とは異なり、牝馬だけあって手元に残すべくニアルコス・ファミリーの勝負服を背負って5月にメゾンラフィットでデビュー勝ち。次走6月28日にシャンティーで行われたG3ボワ賞で重賞初制覇を果たしたのに続いて、無傷の4連勝でG1制覇を果たした。

 89年から93年まで5年間で3度このレースを制し(89年マキャヴェリアン、90年ヘクタープロテクター、93年クードジェニー)、一時はモルニ賞制覇をお家芸としていたニアルコス・ファミリーだったが、今年の優勝は93年以来11年振りのもの。また牝馬によるこのレース制覇は、94年のホーマジック以来10年振りのことだった。

 父が異なる兄のウィッパーと妹のディヴァインプロポーションズだが、ウィッパーの父ミエスクズサンとディヴァインプロポーションズの父キングマンボは、いずれも父ミスタープロスペクター、母ミエスクという全兄弟。すなわち、兄妹の血統構成はほとんど全くと言ってよいほど同じで、ミエスクという80年代を代表する牝馬の偉大さを改めて知らされる結果となった。この日のレース振りや、兄が残しつつある実績を鑑みると、妹もマイラーとして大成していくと見るべきであろうが、兄妹の母ミストゥーリアリティーは12ハロンで勝ち鞍があり、その父はサドラーズウェルズ。血統的にはもっと長い距離でもよさそうで、ミエスクが2着に敗れた仏オークス(2100m)まで視野に入れても良さそうな逸材だと思う。

 一方敗れたとは言え、フットワークの大きな走りに大物感を漂わせていたレイマンの評価が落ちるわけでは決してない。サンデーサイレンスと言うよりは、母の父ヌレイエフの影響が出ている丸みのある馬体は、まだまだ成長途上。更に、渋った馬場も気にしていたようで、勝負どころで追い出されて手前を換えた瞬間に大きくヨレるなど、力を出し切っての敗戦ではなかった。パドックでも落ち着き払っていたディヴァインプロポーションズとは、現時点での完成度に明らかに差があり、将来へ向けての期待という点では勝ち馬に劣らぬものがありそうだ。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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