平成17年度ひだかトレーニングセール上場馬

2004年08月24日(火) 20:23

 サマーセールが終了して半月ほど経過したばかりだが、早くもひだか東農協では、来年度の2歳トレーニングセールに向けて、上場馬の募集を開始した。今年の同セールは、対前年度比で総額約2億円も売上げを伸ばし、65頭中42頭を売却。計5億1072万円を売上げて盛況であった。

 それを受けて我々組合員への案内文書も「本年のセール結果は、売却額、売却率、平均価格とも昨年を上回り(中略)良質馬については、特に購買者が集中し高額となる状況」であると書き綴る。そして、「当セールの活性化を図るには、購買者への購買意欲、信頼性が重視されるところであり、そのためにも良質馬の上場が必要」だと説く。・・・仰る通り・・・なのだが、「購買者への購買意欲、信頼性」というくだりが明らかに日本語としては表現がおかしい。まぁ、それはさておき、来年度は5月24日、火曜日の一日開催で上場予定頭数は100頭を目処に募集とのこと。申し込み期限は12月20日。申込金5万円である。

 このセールには、かなり厳しい選定基準が設けられており、上場候補馬は「血統による基準」と「馬体による基準」の両方を満たすものを最優先する、とある。どんな基準なのか?

 まず、「血統による基準」だが、項目が2つあり、1.申し込み馬の母、兄弟姉妹、甥姪、叔父叔母、祖母について、中央競馬のGレース5着以内、海外競馬(パート1国)のG競走、またはリステッドレースにて3着以内、地方競馬のダートグレード競走(中央地方全国交流)3着以内の実績があること。そして、2.申し込み馬の父が2003年度及び2004年度の日本(地方も含む総合という意味か?)リーディングサイアーランキング40位以内、もしくはファーストサイアーランキング15位以内、2歳サイアーランキング20位以内。また産駒がデビュー前の種牡馬に関しては、2004年度の種付け頭数が50頭以上のもの。というような基準だ。

 「馬体による基準」としては、言葉で説明するのが難しいらしく「健康で発育良好なもの、善良な飼育管理がなされているもの」としか記されていない。こちらはともかく、問題なのは、「血統による基準」である。

 リーディングサイアー40位以内というのは、かなり厳しい制限で、全体から見るとほんの一握りの種牡馬でしかない。まして、近親にG競走入着馬がいる馬よりもいない馬の方がたぶん圧倒的に多いはずで、ハードルの高さがネックになるだろう。

 今後、最終的に売れ残ってしまうのはおそらく凡庸な血統の牝馬が大半だろうが、現在の状況では牡馬とて、性別が「牡」というだけの“売り”で買い手がつく時代ではない。そもそも2歳トレーニングセールは、そんな平凡な馬たちが一山いくらで買い叩かれるのを少しでも防ぐため、「調教済み」という付加価値をつけて販売する機会を設けるのが当初の目的だったはず。

 その主旨から見れば、このひだか東農協のことさら厳しい選定基準が大袈裟に言えば「弱者切り捨て」のごとく思えてならない。

 もっとも、中央競馬向きの上質馬に対して、低価格馬の需要を支えていた地方競馬の購買層が減少の一途をたどっている現状では、もう「実戦向きの凡庸な血統馬」などでは買ってくれる人がいないのかも知れない。軽種馬生産牧場(組合員)救済と市場振興との狭間で、農協の苦悩も理解できないわけではないが、どうも「売れそうにない馬は申し込むな」と言われているようでやや悲しくなる。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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