週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2004年08月31日(火) 15:22

 ヨーロッパにおける今季のイヤリングセール・サーキットの幕開けを飾る『エージェンシーフランセーズ・ドーヴィルセール』が、8月22日から25日までの4日間にわたってフランスのドーヴィルで行われ、概ね堅調な市場が展開された。

 総売上げは前年比9.9%アップの2849万ユーロ、平均価格が前年比3.4%アップの76,383ユーロ、中間価格が前年比21.2%アップの57,000ユーロと、主要な指標は軒並み上昇。中間価格の上昇が平均価格の上昇を大きく上回ったように、市場は特に中間以下の価格帯が堅固で、安定感のあるマーケットとなった。活発だった中間以下の市場を主に下支えしたのは地元フランスのバイヤーたちで、ドメスティックなブラッドストックマーケットに潤沢な運用資金があったという点では、先々週のこのコラムで結果をお届けした『ファシグティプトン・サラトガセール』と全く同様の結果となった。

 最高価格馬は、2日目に登場した父グランドロッジ、母ネイティヴトワインの牡馬。兄にドイツのG3勝ち馬ターリーブ、叔父にフランスのG2ドラール賞の勝ち馬で、G1ネイ賞2着の成績もあるオルダーブルックがいるという牝系で、代理人のリチャード・オゴーマン氏が70万ユーロで購買した。ただし、最高価格が70万ユーロというのは、ドーヴィルセールがユーロ立てに行われるようになった2002年以降では最も低い数字だ。

 代理人を通じた購買はあったものの、マクトゥーム兄弟は誰一人としてせり会場に姿を現さず、こうなるとトップエンドのマーケットが途端に脆弱になってしまう点でも、『ファシグティプトン・サラトガセール』と同様の傾向となったと言えよう。ちなみに巷間伝えられているところでは、セール初日を2日後に控えた8月20日に、マクトゥーム兄弟は『ホテル・ロワイヤル』に予約していた32部屋を全てキャンセルしたとのことで、この噂は瞬く間に関係者の間に広まり、主催者と販売者は頭を抱えたと言われている。バイバック・レートが前年の22.5%から24.8%に上昇したことも合わせて、堅調な中にも将来への不安材料ものぞかせた結果となった。

 日本人によると見られる購買は2頭。数こそ少ないものの、この2頭はいずれも今季のG1ホースの弟で、来年のPOG戦略上でも見逃せない存在になると思われる。1頭は、父ロミタス、母シーリングの牡馬。2つ上の姉に、今年の仏1000ギニー優勝馬トレストレラ(父オーペン)がいる。もう1頭も父はロミタスで、母スピリットオヴイーグルスの牡馬。こちらは兄に、アメリカの芝のG1チャーリーウィッティングハムHの今年の優勝馬サビアンゴ(父アカテナンゴ)がいる。なおかつ、アーリントンミリオンや香港QE2世Cを制したシルヴァノの全弟にあたるという、ピカピカの良血馬である。

 両馬の父ロミタスは、バーデン大賞などを制したドイツの名馬。さらに種牡馬としても、前出のシルヴァノをはじめ、独ダービー馬ベレノス、独セントレジャー勝ち馬リクイド、伊オークス馬メリディアーナ、伊1000ギニー勝ち馬サドワなど、クラシックホースを続々と輩出。現在は、シェイク・モハメドにリクルートされてニューマーケットのダルハムホール・スタッドで供用されている、話題の種牡馬である。決して仕上がり早とは言えない血統だが、『生涯ルール』でPOGをお楽しみの方にとっては、狙って面白い存在となるはずである。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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