セプテンバーセール

2004年09月07日(火) 19:45

 9月7日と8日の両日にわたり、静内の北海道市場にて「セプテンバーセール」が開催される。折しも、先週同様また台風が北上してくる気配で、8日のアングロアラブ市場は大荒れの悪天候を覚悟しなければなるまい。

 それにしても、何かが狂っているのではないか、としか思えないような台風襲来だ。九州、沖縄に南東方面から近づいた台風が、このところ決まって西日本に上陸し日本海へ抜け、そして速度を増して北海道へと近づいてくる。先週の16号は大した被害も出ずにホッとしたのも束の間、また18号が勢力を保ったまま日本海を北上中である。今度の18号は、雨量もさることながら、猛烈な風が特徴らしく、広島市では7日午後に最大瞬間風速60.2mmを観測したとのこと。想像を絶する速度である。

 さて、セプテンバーセール。周知の方も多いと思うが、昨年のこのセールで落札されたコスモヴァレンチ(父マイネルラヴ、母イブキローマン、牝2歳、三石町・水丸牧場生産)が5日の「小倉2歳ステークス」(G3)を制し、コスモフォーチュン(父マイネルラヴ、母グレースマリヤ、牝2歳、門別町・荒井ファーム生産)も3着に入った。驚いたことに、両馬の落札価格は共に210万円(税込み)だった。決してこの両馬だけが飛び抜けて安かったわけではなく、昨年の同セールで落札された58頭(上場247頭)のうち、税抜きで計算すると35頭が300万円未満の馬だった。

 岡田繁幸氏は昨年6頭を同セールで落札し、そのうちの3頭がマイネルラヴの牝馬。価格はいずれも210万円から252万円である。

 普通、市場で200万円程度のサラブレッドは、まず活躍できないと思われがちだが、やはり岡田氏の眼鏡にかない、ビッグレッドファームで鍛えられたことで価格は安くても十分に「元が取れる馬」として成長するのである。東西合わせて100少々しかないGレースなど、そうそう勝てるわけはないのだが、社台=サンデーの対極に位置する存在として、コスモヴァレンチ、コスモフォーチュンの存在は今後も注目して行きたいと思う。

 しかし、7日のサラブレッド1歳市場は、何とも厳しい結果となった。235頭上場中、落札は46頭。売却率はついに20%を下回った。売上げ総額1億5004万5千円。平均価格は326万1848円。最高価格馬は「コレクション2003」(父スキャン、母コレクション、牡黒鹿毛、静内町・聖心台牧場生産)の682万5千円(税込み)。

 売却総額(昨年は1億8269万円余)、売却率(昨年は23.5%)ともに数字が落ち込んだのは、やはり相変わらず止まるところを知らない地方競馬の衰退による買い控えが原因なのだろうか。コスモヴァレンチ効果に期待できるほど現実は甘くなかったということなのかも知れない。

 先月相次いで北関東地区の宇都宮と高崎両競馬場が今年度末で廃止される見通しである、との報道が生産地を駆け巡った。

 昨年末まですでに累積赤字が50億円に達している高崎競馬と、かつて130億円もの基金を積み立てていたものの今年度でそれが2億円台にまで減少する見込みの宇都宮競馬。(栃木県は一般会計からの財政補填を実施しない方針であると聞く)

 中津、新潟、三条、益田、足利、上山と続いた地方競馬の廃止が、また今度は北関東にも飛び火しそうな状況下では、やはり需要が冷え込むということか。

 さて、明日はアングロアラブの市場だが、こちらも明るい材料に乏しく、かなり厳しい結果になるだろう。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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