2016年05月05日(木) 12:00
この成すべき事が大きいを、競馬の長距離戦に当てはめることができた。春の天皇賞でキタサンブラックと武豊騎手の人馬の戦う姿から、心を乱さない、静かな闘志を感じたのだ。競馬で騎手は馬の気に乗ると言われてきたが、その点、武豊騎手にソツはない。キタサンブラックに、乗りやすい馬、思いどおりの競馬ができる馬という感想をもっている。この思いは馬にも伝わるので、より一層人馬の呼吸はぴったりくる。三千二百米を逃げることを、そう簡単には選択できるものではない。それでも、先手必勝と言うように、他をリードする攻めの姿勢は大切だ。
キタサンブラックは、なにが何でも逃げるというレースはしていないが、たまたま、スタートが良くて他に行く馬がいないので、ここ3戦は逃げる形になってきた。一番枠でいいスタートを切れた上に、他にとばすものがいなかったので、天皇賞では楽に先頭に立ち、あとは武豊騎手の鮮やかな手綱さばきが目を引いた。キタサンブラックは、背が高く胴の長い体形でフットワークの大きい走法、ステイヤーとしての条件を備えている。それに加えて、道中で全くと言っていいほど引っかからない気性が大きな武器だ。パドックから本馬場に入ってくる顔はとても賢そうで、一年前よりもずっと落ち着いて見えていた。この性格こそが、ステイヤーとしての大きな勲章をもたらしてくれた。
運命は性格の中にあるを具現したのだ。一気にスパートして行ける馬ではないので、いざというときにちょっともたつき他馬に来られてしまうことがあるが、武騎手は十分に承知していた。どう走らせるかの意志は、距離が長いほど見えてくる。そして、性格を知ることで、その馬の先き行きも予測できるのが面白い。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
プロフィール
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