2016年05月27日(金) 18:01 38
▲俺はこの馬に懸ける―。アンサンブルライフで、悲願の東京ダービー制覇へ(写真:高橋正和)
的場文男騎手のすごさは、中央競馬を中心に見ているファンにも広く浸透していることだろう。59歳となった今も、誰よりもパワフルな追い方でファンを魅了し、『大井の帝王』として君臨し続けている。通算勝利数は日本歴代2位の6874勝(2016年5月25日現在)。歴代1位の7151勝を誇る佐々木竹見元騎手の背中に近づいている。
5月18日には大井記念で9度目の勝利を挙げ、自身の持つ地方競馬最高齢重賞勝利記録を塗り替えた。ダートグレードの最高峰である帝王賞を3度勝利し、年末の大一番東京大賞典も勝っている。いくつもの記録と勲章を持っている的場騎手が、唯一手に入れていないのが『ダービージョッキー』の称号なのだ。
なぜ的場騎手は東京ダービーを勝っていないのか。これまで34戦して2着9回3着4回。決してチャンスがなかったわけではないし、勝っていないだけで結果を出していないわけでもない。大井の帝王を持ってしても、勝利を掴むことができない。それがダービーのダービーたる所以なのかもしれない。
2着9回ということで、的場騎手ご自身にとっても悔しいレースが多かったのではないだろうか。ご本人に伺ってみると、「一番悔しかったのはシナノデービス(1987年2着)、次に悔しかったのはブルーファミリー(1993年5着)」と答えてくれた。34回の挑戦の中で、1番人気馬に騎乗した2度のレースである。
シナノデービスはデビューから5連勝で羽田盃を勝ち、大本命に推された東京ダービーで初めて負けた。ブルーファミリーもデビューから7連勝で羽田盃を勝ち、同じく大本命に推された東京ダービーで初めて負けている。今以上に『大井の帝王』として絶対的な存在だった当時、この2戦の負けは相当大きなものだったに違いない。確かなことは当時を知る人たちにしかわからないけれど、ブルーファミリーで負けた辺りから「東京ダービーだけ勝てない」というジンクスが浸透していったのではないだろうか。
▲当時、圧倒的不利とされていた外枠が影響し、ブルーファミリーでは5着に敗れた(写真は羽田盃優勝時、提供:TCK)
パーティメーカーは門別でデビューし、2歳の時に盛岡の芝重賞『ジュニアグランプリ』を制覇。南関東移籍後は重賞勝ちこそなかったものの、JRA勢相手の『全日本2歳優駿』で5着に健闘して能力の高さを見せている。しかし、3歳になってからは上位争いに食い込めなくなり、5戦連続で馬券圏外という結果のまま東京ダービーを迎えた。パーティメーカーに騎乗することを選んだのは、的場騎手自身だという。
管理する小久保智調教師は、「この馬だと決めたら、的場さんは迷わないんですよ。パーティメーカーは前哨戦の京浜盃も羽田盃も結果を出すことができなかったけれど、迷わず乗ってくれたんです。それで2着に持って来るんですから、本当にすごいと思いました」。
この時のレースで、先に抜け出したのは同じ小久保厩舎のラッキープリンスだった。小久保調教師はその姿を確認すると、さらに後ろから追い込んで来るパーティメーカーを見て、「的場! 的場!」と声を張り上げて応援した。結果、ラッキープリンス1着、3/4馬身差でパーティメーカーが2着に入った。小久保厩舎にとってはワンツー制覇の快挙であり、浦和勢にとって25年ぶりの東京ダービー制覇となった。「ラッキープリンスで勝てて、もちろんすごく嬉しかったです。ただ、的場さんに勝って欲しかったというのも本音ですね」。小久保調教師は嬉しさの中に複雑な想いがあったことを話してくれた。
▲昨年の東京ダービー。懸命の追いを見せるも、同厩のラッキープリンスに3/4馬身差で敗れた(写真提供:TCK)
レース後的場騎手は、「2着に負けたのは、まだ騎手を続けろってことなのかな。ダービー制覇は人生の宿題」と話していた。あれから一年。今年の東京ダービーは、昨年と同じく小久保厩舎のアンサンブルライフで挑む。的場騎手に迷いはない。「他にも有力な騎乗馬がいたけれど、俺はこの馬に懸ける」。35度目の挑戦は、6月8日(水)に幕を開ける――
▲的場文男59歳 35度目の東京ダービー挑戦は6月8日(水)に幕を開ける――(写真:高橋正和)
●TCKからのお知らせ!
次開催は6月6日(月)~10日(金)、もちろんトゥインクル(ナイター)開催です! 特に8日(水)の東京ダービー(SI)開催日は、楽しいイベント目白押し。
当日は大井競馬場にご来場の方、先着12,000名様にスクラッチカードを配布し、抽選で2,000名様に東京ダービーTシャツをプレゼント! カラーはネイビー、ホワイト、グレーの3色をご用意!
この他、グラビアアイドルの杉原杏璃さんをお招きしてお送りする「東京ダービー予想ステージ」などイベント盛りだくさん! TCK最高峰のレース・東京ダービーはぜひ生でご観戦ください。詳しくは⇒【TCK公式サイト】へnetkeiba特派員
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