2016年06月09日(木) 12:00
こうした自問自答の末の勝利、それを安田記念のロゴタイプの復活に見ることが出来た。父ローエングリンが4回も挑戦して勝てなかったレースを、GI3勝目で射止めたと言ってしまえば簡単だが、ここまでの戦いはそんなに平坦ではなかった。朝日杯FSを勝って2歳チャンピオンになったのが4年前、それからスプリングS、皐月賞と勝ち進んだが、それ以後がさっぱり。さすがは2歳王者、速くて強い馬が一冠目を制したと言われてから、実に3年1カ月22日ぶりでのGI勝利だった。
田中剛調教師は以前から、「賢くて競馬場に着いてレースが近づくとスイッチが入る」と、いつも細心の注意を払ってきた。これまで海外遠征も経験し、勝てないまでも素養の片りんはのぞかせてきた。だが勝たないことには影は薄くなる一方で、GI2勝馬が安田記念で8番人気と、評価を下げていた。ほめられたり、けなされたり、無視されたりと、心が暗くなることが続く中にも、鍛えることを怠らず、ここにきてスランプから完全に脱出したと判断を下すまでにきていた。ここまでの自問自答は、かなりあったであろう。以前よりも背腰やトモがしっかりしてきたことで、今回は2週続けて負荷をかけて追い切ることができ、直前は田辺騎手で息を整えるていど、いかにもゆとりが感じられていた。これは、いざレースというときに有効で、勝負師田辺騎手にとり戦いやすかったろう。
一方のモーリスは、どういう状況であろうとも評価は下がることはなく、香港から帰国後、輸入検疫1週間、東京競馬場に移ってからの着地検査3週間と、ずっと一頭だけの日々が続いていたにも拘らず、常に期待の方が大きかった。次は、モーリスが自問自答で勝利をつかむ番だ。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
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