2016年06月14日(火) 18:01 148
▲今回は岩田康誠騎手、戸崎圭太騎手に関する質問にお答えします
Q. 昨秋から岩田騎手がスランプに陥っているように見えますが、福永騎手の目にはどう映っていますか? やはり心配でしょうか? また、お二人のあいだで何かやり取りがあったりするのですか?
A. 去年の秋から冬にかけて、「岩田くん、大丈夫かな?」と思った時期は確かにあった。それもあって、岩田くんとは自分の休養中に少し話をした。
以前、ここにも書いたと思うが、やはりルメールとミルコの存在が、自分にとって知らず知らずのあいだにストレスになっていた時期があった。存在そのものというより、彼らが移籍してきて以降、比較され続けることに疲れていたといったほうが正しいかもしれない。自分はそのことに休養して初めて気づいたのだが、必然的に比較対象となるリーディング上位のジョッキーは、少なからずみんな感じていたように思う。
かつて自分がパッとしなかったときに、「祐一くん、そんな気持ちじゃダメや!」と発破をかけ続けてくれたのが岩田くん。自分には今でも岩田くんにここまで引っ張ってきてもらったという思いがあるから、もし岩田くんが悩んだり迷ったりすることがあれば、今度は自分が力になりたいとずっと思っていたし、これからもその思いは変わらない。
岩田くんとは、鞍置場がほとんどの競馬場で隣同士。だから、いつも近くで見ているが、最近は楽しそうに乗っているし、いろいろと吹っ切れたようにも見える。もう心配もしていないし、本来の岩田くんが戻ってきているような気がする。
改めて言うのも何だが、自分は“岩田康誠”という人間が好きだ。決して器用な人間ではないけれど、自分にはないものをたくさん持っているし、何より馬に対してものすごく純粋だ。馬への思いは本当に真っ直ぐで、彼のなかにはホースマンとしての愛がある。
だからこそ、このご時世、逆につらくなることもあると思うが、多くの人間がかかわっている以上、ひとつの事象に対して温度差が生じるのは仕方がないこと。でも、これからも不器用な岩田くんのままでいいと思うし、むしろ貫いてこそ“岩田康誠”なんじゃないかと思う。
Q. 今年も日本人ジョッキーではトップの成績で、昨年は福永騎手と東西でリーディング争いをした戸崎騎手ですが、福永騎手にとってどういう存在でしょうか? お互いの存在を意識したりしていましたか?
A. 後輩ながら、圭太の頑張りには敬服している。ルメールの休養もあったが、先週が終わった時点で、ついに勝ち星でトップに立った。それは本当にすごいことで、頼もしいと思う半面、自分も負けていられないと改めて思わされる存在だ。
競馬場で会えば普通に話をするが、プライベートでの接点は、名古屋に移動するときに一度一緒にうなぎを食べたくらいで(笑)、飲みに行ったり、深い話をじっくりとしたことはない。それなのに、自分が京都で入院していたとき、競馬帰りにわざわざお見舞いにきてくれた。ビックリしたけどうれしかったし、ものすごく律儀なヤツやなぁと思った。
どういう存在かと問われれば、年齢も4つ下だから“ライバル”という感覚でもなく、“戦友”というのが一番しっくりくるかもしれない。同世代ということもあると思うが、やはり自分にとってライバルと思える存在は岩田くんだけだ。
この春もヴィクトリアマイルを勝ち、勝利数もすでに86。もちろん“負けてられへん”という思いはあるが、岩田くんや圭太、豊さん、ルメール、ミルコといった素晴らしいジョッキーたちと競馬ができることが本当に楽しいし、いつまでもその輪の中で活躍できるジョッキーでいたいと思っている。
(文中敬称略)
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福永祐一
1976年12月9日、滋賀県生まれ。1996年に北橋修二厩舎からデビュー。初日に2連勝を飾り、JRA賞最多勝利新人騎手に輝く。1999年、プリモディーネの桜花賞でGI初勝利。2005年、シーザリオで日米オークス優勝。2013年、JRA賞最多勝利騎手、最多賞金獲得騎手、初代MVJを獲得。2014年のドバイDFをジャスタウェイで優勝。