2016年06月17日(金) 18:00
◆中央・地方を通じて整備し直す必要がある
今年は2週間以上にも渡ったダービーウイークが、16日の兵庫ダービーで最終戦を迎えた。場外発売や地方競馬IPAT発売などの関係で調整が難しく、ダービーウイークがこれほど長期間に分散してしまったことに関しては別の機会に譲るとして、兵庫の3歳三冠にはJpnIIの兵庫チャンピオンシップがあることで、重いものを背負ってしまったなあという感じがする。
「重いもの」というのは、兵庫チャンピオンシップに出走してくる中央馬が初期と比較すると格段にレベルが高くなり、地方馬、特に地元馬にとっては容易には勝てないレースになってしまったということ。
兵庫チャンピオンシップは、2000年の第1回には笠松のミツアキサイレンスが勝ち、第2回には地元のロードバクシンが勝って、兵庫はサラブレッド導入から2世代目で三冠馬を出した。しかしご存知のとおり、兵庫チャンピオンシップを制した地方馬はロードバクシンが最後となっている。
ここ10年ほどの成績を見ても、2006〜2011年の6年間では、地元兵庫所属馬は勝てずとも計4頭が2着もしくは3着に入っていた。しかし2012年以降では、3着以内に入った地方馬が1頭もいないどころか、昨年以外は中央馬が掲示板独占という状態。
今年の兵庫ダービーは、断然人気となったマイタイザンがハイペースの先行争いで7着に沈み、菊水賞と、続く3歳特別を惨敗して人気を落としていた同馬主・同厩舎のノブタイザンが勝つという興味深い結果となった。2歳時には前者が兵庫若駒賞を、後者が園田ジュニアカップを制して、この世代で頂点を争う2頭として早い時期から注目されていたが、2頭ともに兵庫チャンピオンシップに出走することはなかった。
近年、兵庫ダービーに期待をかける有力馬には、兵庫チャンピオンシップを避けるという馬も少なくないため、兵庫チャンピオンシップではますます中央馬が掲示板独占という傾向になっている。兵庫の3歳戦線には、菊水賞→兵庫チャンピオンシップ→兵庫ダービーという三冠が存在しているにもかかわらず、それを目指す馬が少ないという残念な状況となっている。
これは先週取り上げた、東京ダービーに中央から転入初戦の馬が出走したことにも関連するのだが、中央のダート3歳路線が、上級クラスの出口が極端に狭い、先詰まりの状態になっていることに起因している。
あさって(6月19日)行われるユニコーンSでは、登録の段階では、1000万以上の賞金を持って出走が確定していた馬が4頭なのに対して、賞金900万円の2勝馬は21頭から抽選で12頭が出走という異常事態となっている(実際には、抽選前にアルーアキャロルなどが回避したようだが)。それゆえ、JpnIIの格付けがある兵庫チャンピオンシップに中央の有力馬が集中し、またダートグレードに匹敵する高額賞金の東京ダービーに中央から移籍して挑戦してくるという状態になっても仕方がない。
思えば交流重賞が始まった当時、地方で行われる3歳の交流重賞には、現在の兵庫チャンピオンシップ、ジャパンダートダービーのほかに、6月の東海優駿(名古屋)、7月のグランシャリオC(旭川)、9月のサラブレッドチャレンジC(金沢)があり、岩手のダービーグランプリも中央との交流として行われていた。それらは資金難などで廃止されたが、当時は中央の3歳ダートの層もそれほど厚くはなく、出走馬のレベルが微妙だったことも確か。
近年では中央でも2歳時からダートの番組がかなり充実。その結果が、ユニコーンSで2勝馬が溢れ出してしまっている現状だ。除外された馬は、同日に組まれている同じダート1600m、古馬1000万円以下の青梅特別にまわることになり、青梅特別にまわされた3歳馬のほうがユニコーンSよりレベルが高かったのではないかという年もあった。
中央の3歳ダート重賞は、ほかに8月にレパードSが行われているだけ。あらためて中央・地方を通じて、3歳ダート路線は整備し直す必要がある。夏以降は古馬との混合の番組がメインになるため、ユニコーンSより前の時期に、中央・地方で各1レース程度、GIII/JpnIIIの3歳ダート重賞が設定されてもいいのではないか。
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斎藤修
1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。
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