週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2004年09月28日(火) 20:02

 今年ほど予想の難しい凱旋門賞もかつて無かったように思う。9月に入って各地で行われた最終プレップでは、有力と目された馬たちが軒並み大敗。一気に主役不在の混戦模様に突入した凱旋門賞戦線だったが、状況は当該週を迎えてなお混迷の度を深めている。

 『主役不在』だろうが『混戦模様』だろうが、出走馬の顔触れが把握出来れば勢力分布を分析することは可能なのだが、この原稿を書いている日本時間の28日(火)午前に至ってもなお、複数の有力馬が出否未定の状態なのである。一昨年のこのレース2着馬で、前走インターナショナルS快勝のスラマニ。今年の愛ダービー馬で、出走するためには追加登録の必要なグレイスワロー。昨年の2着馬で、前走バーデン大賞7着のマブタカー。セントレジャー2着馬で、これも追加登録の必要なクイフなど、ブックメーカーの前売り人気上位に、腰の定まらない連中がウヨウヨ居るのである。

 これだけ上位陣がグズグズしていると、一旦「やめた」と言った組から「やっぱり出ようか」という馬も出てくる。ヴェルメイユ賞で生涯初の敗戦を喫した後、2400mは長いとして凱旋門賞回避を宣言したラティスの陣営が、「馬場も乾いているし、出るかもしれないよ」と言いだしたのだ。これに加えて、タップダンスシチーを巡るスッタモンダである。まさに、蓋を開けてみるまでは何が起こるかわからない、五里霧中の凱旋門賞だ。

 そんな中、当日1番人気に推されるのは、どうやらノースライトになりそうだ。英ダービーで強い勝ち方をした後、愛ダービーではグレイスワローの2着に敗退。その後、愛ダービーのレース中にトモを捻っていることが判明し、戦列を離れていた。結局、一連のプレップレースには姿を見せず、休養期間は3ヶ月を越えることになったが、9月26日(日)にニューマーケットで行われた追い切りの後に、管理するマイケル・スタウト師がゴーサインを出し、ぶっつけでの凱旋門賞参戦が決定。これを受けて、ブックメーカー各社が一斉にこの馬を本命に掲げることになったのだ。

 つまりは、こういう臨戦態勢の馬が主役の座を割り当てるられるほど、今年は役者が不足しているということ。現時点では誰もが予測していない、驚天動地の結末まであり得るのではないかと思っている。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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