いざ父子制覇へ!ゴールドアリュール産駒ゴールドドリーム/ジャパンダートダービー

2016年07月12日(火) 18:01

最初で最後の4冠馬 トーシンブリザード

 7月13日(水)、大井競馬場で行われる『第18回ジャパンダートダービー』。中央競馬・地方競馬の代表馬たちが集結する、3歳のダートチャンピオン決定戦であるとともに、南関東競馬クラシック3冠の最終戦として位置付けられています。

 ここで南関東クラシック3冠の歴史を簡単にご紹介すると、古くは春に羽田盃と東京ダービー、秋に東京王冠賞が行われていました。1996年から羽田盃、東京王冠賞、東京ダービーの順番ですべてのレースが春シーズンに行われるようになり、1999年にジャパンダートダービーが創設。そして2001年のレースを最後に東京王冠賞が廃止され、2002年からは羽田盃、東京ダービー、ジャパンダートダービーで3冠を形成することになりました。

 そんな歴史の中で、2001年に羽田盃、東京王冠賞、東京ダービー、ジャパンダートダービーの4つのレースを全て勝ち、史上初・最後の4冠馬となったトーシンブリザードの思い出を振り返りましょう。

DGに魅せられて

▲東京王冠賞で二冠目を手にしたトーシンブリザード(撮影:下野雄規)

 2000年9月、船橋の佐藤賢二厩舎からデビューすると3連勝で全日本3歳優駿を制します(当時は旧年齢表記でGII戦でした)。年が明け2001年も連戦連勝を重ねるトーシンブリザード。晴れの日も雨の日も不良馬場でも、石崎隆之騎手がちょっと気合を入れるだけで楽勝。羽田盃、東京王冠賞、東京ダービーの3冠を制覇し、無敗の南関東クラシック3冠馬が誕生します。

 続く『第3回ジャパンダートダービー』では単勝1.0倍の圧倒的な1番人気に推され、レースはトーシンブリザードが逃げる展開。そのまま4コーナーを回り直線を迎えると、他馬の追撃を抑えてゴール! 8戦8勝無敗のまま最初で最後の4冠馬となりました。

 南関東のニューヒーロー。その圧倒的な強さでどこまで勝ち続けるのか?! 地方競馬ファンの夢が大きく広がった矢先、レース数日後に骨折が判明。休養を余儀なくされます。まだ完調ではないと思われた5か月後の復帰戦、初の古馬との対戦となった東京大賞典ではトーホウエンペラー、リージェントブラフらを相手に3着と大健闘。

 続く2002年、中央のGIフェブラリーSに出走すると、アグネスデジタル、トゥザヴィクトリー、ノボトゥルー、ウイングアローら強豪が集結する中、4番人気で2着と激走。負けたことは悔しかったけれど「船橋のトーシンブリザードがフェブラリーSで2着になった」ということがとても誇らしく、ますます地方競馬が大好きになったことを覚えています。

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▲2002年のフェブラリーSでアグネスデジタルの2着に健闘(撮影:下野雄規)

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▲2005年11月23日に船橋競馬場で行われた引退式、4冠の手綱を取った石崎隆之騎手を背に(撮影:高橋正和)

東京ダービー馬バルダッサーレ のびしろに魅力

 さあ、それでは今年の出走馬を見ていきましょう。2013年生まれのダートホースたち。2015年にデビューした彼らの勢力図は、暮れの全日本2歳優駿の時とは大きく変わっているのが特徴です。

 今年のUAEダービーを制し、アメリカの3冠レースすべてに挑戦したラニの名前がここに無いのは仕方がありませんが、ユニコーンSを始め、高レベルでの戦いを繰り広げている3歳世代。今後のダート界を牽引するメンバーと言っていいでしょう。

 まずはユニコーンSの勝ち馬、ゴールドドリーム。5戦4勝2着1回と連対率100%。ヒヤシンスSではメンバー中最速の末脚で豪快に差し切り無傷の3連勝。兵庫CSでは2着に敗れましたが、続くユニコーンSでストロングバローズとの一騎打ちを制した勝負根性は本物。ゴールドアリュール産駒で、2013年のクリソライトに続いて父子制覇を狙います。

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▲ユニコーンSのゴール前、勝ち馬ゴールドドリーム(左)と2着のストロングバローズ(撮影:下野雄規)

 ユニコーンSでゴールドドリームの2着だったストロングバローズ。伏竜S(OP)の勝ち馬で、6戦3勝2着3回とこちらも連対率100%。ヒヤシンスSでもゴールドドリームの2着でしたが、ユニコーンSでは先行して抜け出し、並んできたゴールドドリームに最後まで食い下がり、クビ差の戦いぶりは立派。今回、逆転も夢ではありません。

 兵庫CSでゴールドドリームを破り、重賞初制覇を果たしたケイティブレイブ。地元の名手・川原正一騎手を背に逃げて完勝しました。自分の形に持ち込むと怖い存在。今回初コンビとなる絶好調・武豊騎手がどんなレースを作るか、目が離せません。

DGに魅せられて

▲武豊騎手との初コンビでも注目のケイティブレイブ(C)netkeiba.com

 そして忘れてはいけないのが、昇竜S(OP)の勝ち馬・ダノンフェイス、鳳雛S(OP)の勝ち馬・キョウエイギア。大井競馬場でどんな走りを見せてくれるでしょうか。

 迎え撃つ地方馬の筆頭は、転入初戦の東京ダービーで衝撃的な強さを見せつけたバルダッサーレ。中央時代なかなか未勝利を抜け出せなかった印象が強いですが、それは芝のレースでのこと。ダート戦に限れば東京ダービーを含め4戦3勝と底を見せていません。成長途上で、まだまだ上を目指せそうな魅力に溢れています。

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▲2冠を狙う東京ダービー馬バルダッサーレ(撮影:高橋正和)

 現在7連勝中、前走・東海ダービーを圧勝した愛知のカツゲキキトキト。各地の地方競馬のダービー馬が集結するのもジャパンダートダービーの魅力のひとつ。鞍上は木之前葵騎手。昨年のNARグランプリで優秀女性騎手賞を受賞し、女性騎手として今年も高知の別府真衣騎手と勝ち星を争っています。彼女の手綱さばきにもぜひご注目ください。

 歴代の優勝馬にはゴールドアリュール、カネヒキリ、フリオーソなど古馬になっての活躍はもちろん、種牡馬としても実績を残している名馬が誕生しているジャパンダートダービー。今年も好メンバーが揃いました。未来のダート戦線を占う意味でも重要な1戦。今年も心に残るレースが繰り広げられるに違いありません。

※次回の更新は7月17日(日)の18時。盛岡競馬場で行われる「マーキュリーC」のコラムをお届けします!


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【ダートグレード競走とは】
中央競馬・地方競馬の交流を促進し、ダート適性のある実力馬の出走機会の拡大を図るため、全日本的な見地から体系づけられたダート交流重賞競走の総称。

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荘司典子

埼玉県出身。フリーアナウンサー。競馬好きが高じてこの世界へ。2001年から15年間、グリーンチャンネルで「中央競馬全レース中継」のキャスターを務める。2016年度から「グリーンチャンネル地方競馬中継」のコメンテーターとして出演。さらに全国各地の競馬場のトークイベントに参加するなど、中央競馬・地方競馬の垣根を越えて活躍中。

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