2004年10月12日(火) 20:27
夏以降、相次ぐ廃止・撤退報道に揺れている各地の地方競馬。生産地にとっても死活問題という以外に表現しようのない由々しき事態である。
そんな中、10月18日より22日にかけて、静内では今年最後の「オータムセール」が開催される。18日と19日は当歳馬(313頭)、20日から22日までの3日間にサラ・アラの1歳馬(サラ953頭、アラ18頭)が市場に上場される予定である。
だが、見通しはかなり暗いと言わざるを得ない。廃止報道の出てしまった競馬場では、在厩馬の転出が始まっているというし、何より、新しく1歳馬を購入しても、その競馬場自体の存続の目処が立たないうちは、なじみの厩舎であっても預託を見合わせる馬主も出てくるはずだ。「報道が出た段階でもうおしまいだ」と考える関係者も少なくないので、このモチベーションの低下は競馬場存続へ向けて廃止反対運動を展開する上での大きな障害となる。
まさにこんな逆風の中で市場が開催されようとしている。果たしてどの程度の売れ行きとなるものやら。
当歳市場よりも、生産者にとってより切実なのは1歳馬市場の方だ。このオータムセールで売れ残れば、来年の2歳トレーニングセールを目指すか、もしくは自身が馬主となって競馬に供するか、のいずれかである。マーケットブリーダーである以上、生産馬は「売ってなんぼ」の世界。たとえ安価であっても、買っていただける人があればそれに越したことはない。
さて、オータムセールの名簿を見て感じること。それは(毎年のことなのだが)種牡馬によって上場頭数にかなりばらつきがあることがまず挙げられる。もちろん、そもそも種牡馬によって産駒頭数がかなり異なるので、ある程度当然のこととはいえ、この時期まで“売れ残っている”頭数が、全体の血統登録頭数と比較してどの程度の割合になるのか、を以下に記してみよう。(市場申し込み頭数が10頭以上いる種牡馬に限定する)
種牡馬名(市場申し込み頭数、血統登録数) アジュディケーティング(12、107) アドマイヤボス(21、67) ウイニングチケット(11、57) エアジハード(11、58) エイシンサンディ(12、57) キンググローリアス(21、70) キングヘイロー(12、81) サニーブライアン(14、61) シャンハイ(10、68) ステイゴールド(21、135) タイキブリザード(12、51) デュラブ(12、48) テンビー(12、34) トウカイテイオー(22、95) ニホンピロウイナー(15、43) バブルガムフェロー(13、88) パラダイスクリーク(17、68) パークリージェント(18、81) ブラックタキシード(22、90) ブラックホーク(19、81) メイセイオペラ(10、23) リンドシェーバー(12、49) ロイヤルタッチ(15、61) ワレンダー(13、48) ※注、血統登録数は日本軽種馬登録協会の調査による本年8月10日現在の数字
まだ産駒が競走年齢に達していない種牡馬もいるが、こうしてみると、見事に中央よりも地方、芝よりもダート、そして種付け料が比較的リーズナブルな種牡馬が並ぶ。実はこうした種牡馬の産駒が今の地方競馬を支えているのである。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。