2016年08月10日(水) 12:00
10月4日から6日の3日間にわたって、英国のニューマーケットで開催される、欧州最高の1歳馬市場「タタソールズ・オクトーバー1歳セール・ブック1」の上場馬が出揃った。
今年のカタログ記載馬は550頭と、513頭だった昨年を7%ほど上回っている。
上場頭数が増加した背景にあるのが、セール出身馬の活躍である。最近の例を挙げれば、7月23日にアスコット競馬場で行われたG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスSを制し、自身3度目のG1制覇を果たしたハイランドリール(牡4、父ガリレオ)が、13年のこのセールで購買された(購買価格55万ギニー)馬だった。また、そのG1キングジョージの昨年の勝ち馬で、以降今年6月のG1コロネーションCまで、負けなしの5連勝で来ているポストポーンド(牡5、父ドゥバウィー)も、12年の当セールにて購買されていた馬(購買価格36万ギニー)だった。
欧州古馬12F路線の2大巨頭のうち、ハイランドリールの方はどうやら秋の目標をアメリカのG1ブリーダーズCに定めるようだが、ポストポーンドはG1凱旋門賞を目指しており、日本から参戦のマカヒキ(牡3、父ディープインパクト)にとって最大の敵となりそうである。
3歳世代では、7月にニューマーケットで行われたG1ファルマスSで、古馬勢を撃破して優勝したアリススプリングス(牝3、父ガリレオ)が、14年の当セールにて55万ギニーで購買された馬だった。
一方、比較的お安い価格で取引された馬からも活躍馬は出ており、例えば今年5月に香港でG1チャンピオンズ&チェイターCを制し、前年のG1クイーンエリザベス2世Cに続く2度目の国際G1制覇を果たしたブレイジングスピード(セン7、父ディラントーマス)は、10年の当セールにて4万5千ギニー(当時のレートで約623万円)で購買された馬だった。また、ロイヤルアスコットのG1キングスタンドSを制したプロフィタブル(牡4、父インヴィンシブルスピリット)も、13年の当セールにて9万5千ギニー(当時のレートで約1570万円)だったし、春にドバイでG1ジェベルハタを制したトリスター(セン5、父シャマーダル)も、12年の当セールにて15万ギニー(当時のレートで約1992万円)だったから、掘り出し物にも巡り会えるのが、このセールである。
今年の上場馬は、数が増えただけでなく、質的にも極上で、全上場馬の1割以上を占める69頭が、母がG1勝ち馬か、兄姉にG1勝ち馬がいるという馬である。
例えば、上場番号109番の父ガリレオの牝馬は、前述した今年のキングジョージ勝ち馬ハイランドリールの全妹だし、上場番号441番のガリレオの牝馬は、これも前述した今年のファルマスS勝ち馬アリススプリングスの全妹だ。
今年の活躍馬絡みで言えば、上場番号71番の父シャンゼリゼの牡馬は、G1英二千ギニー、G1セントジェームスパレスSと、マイルG1を2勝しているガリレオゴールド(牡3)の半弟にあたる。
種牡馬別に見ると、最もホットなのは、日本で勝ち上がったソウルスターリング(牝2)を含めて、今年2歳の初年度産駒が続々と勝ち上がり、種牡馬としても怪物ぶりを発揮しはじめたフランケルだろう。タタソールズ10月1歳市場のブック1には、17頭のフランケル産駒がスタンバイ。G1アベイユドロンシャン賞勝ち馬トータルギャラリーの半妹(上場番号12番)、母がG1オペラ賞勝ち馬キネアードという牡馬(上場番号134番)、母がG1ロッキンジSなどG1・2勝馬ピアレスのという牡馬(上場番号244番)、G1フェニックスS勝ち馬ゾファニーの半弟(上場番号385番)、母がG1アベイユドロンシャン賞勝ち馬ウィズキッドという牡馬(上場番号418番)、母がG1英千ギニーなどG1・5勝馬アトラクションという牡馬(上場番号475番)、母がG1英オークス馬カジュアルルックという牡馬(上場番号523番)などは、特に注目を集めそうなフランケル産駒である。
フランケル同様、アメリカから付けに来た馬を含めて、最高水準の牝馬に配合されていることを窺わせるのが、トップサイヤーのドゥバウィーである。母がG1コロネーションS勝ち馬フォーレンフォーユーという牡馬(上場番号39番)、母がG1ビヴァリーディーS勝ち馬アイムアドリーマーという牡馬(上場番号110番)、母がG1パーソナルエンスンS勝ち馬アイコンプロジェクトという牝馬(上場番号113番)、G1エクリプスSなどG1・2勝馬マウントネルソンの半弟(上場番号116番)、G1プリティポリーSなどG1・2勝馬イジートップの半弟で、母ジージートップもG1オペラ賞勝ち馬という牡馬(上場番号427番)、G1ミラノ大賞勝ち馬ジャッカルベリーをはじめ、3頭のG1勝ち馬の半弟となる牡馬(上場番号535番)、香港で国際G1・2勝のビバパタカや、北米でG1・2勝のラフィングらの半弟となる牡馬(上場番号540番)など、ドゥバウィー産駒も超良血馬が目白押しである。
さて、1歳馬市場と言えば、注目したいのはこの世代が初年度産駒となる新種牡馬で、中でも、初年度に交配した牝馬の質が非常に高かった、デクラレーションオヴウォーとアンテロの2頭には、購買者の大きな関心が寄せられそうである。
G1クイーンアンSやG1インターナショナルSを制したデクラレショーンオヴウォー(父ウォーフロント)の産駒では、G1ナショナルS勝ち馬トゥアモアの半弟(上場番号2番)、G1セントレジャーなどG1・2勝馬シンプルヴァーズの半弟(上場番号89番)、昨年の欧州長距離王者で、今年のロイヤルアスコットでもG1ゴールドCを快勝したオーダーオヴセントジョージの半弟(上場番号460番)らに注目が集まる。
G1仏ダービー馬アンテロの産駒では、G1ブリティッシュチャンピオンズ・フィリーズ&メアズ勝ち馬シールオヴアプルーヴァルの半弟(上場番号93番)、母がG1チーヴァリーパークS勝ち馬フーレイという牡馬(上場番号107番)、母がG1フィリーズマイル勝ち馬レッドブルームという牡馬(上場番号274番)、母がG1ナッソーS勝ち馬サルタニーナという牡馬(上場番号329番)らに、購買者の視線が刺さりそうである。
筆者もこのセールは取材に出向く予定なので、新種牡馬の産駒を中心に、実馬をじっくりと見て来たいと思っている。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。
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