2016年08月15日(月) 18:00
8月16日(火)、盛岡競馬場で行われる『第21回クラスターC』。当日は夏休みを利用して、現地での観戦計画を立てている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
JR盛岡駅から車で約30分。市街地を抜け、山中の曲がりくねった道を登った先に競馬場があります。正門を入るとまず目に入るのが巨大な馬像。その後ろには近代的なスタンドがそびえ立ち、馬像の正面に立って後ろのスタンドと併せて眺めると、ペガサスが翼を広げているように見える、素敵なデザインになっています。
正門を入るとまず目に入るのが巨大な馬像
スタンドを抜けると緑の山々に囲まれた美しいコースが出現。外側がダートで、内側が芝。砂と芝生の色彩のコントラストが、見慣れたJRAの競馬場とは逆で、新鮮な驚きと感動が味わえます。現在の地方競馬場で芝コースがあるのは盛岡だけ。地方競馬といえば“ダート”という概念を打ち破る光景は、まさに唯一無二と言っていいでしょう。
ダートよりも内側にある芝コース
かつて盛岡競馬場が市内の上田地区にあった頃、競馬場の近くに湧いていた“黄金清水”にちなんで黄金競馬場と呼ばれていたことから、現在の場所に移転後「OROパーク」という愛称になりました。OROはスペイン語で黄金という意味。晴れた日には真っ青な空が広がり、コースの反対側に岩手山の絶景も展望することができる、まさに黄金という名にふさわしい美しい競馬場です。
黄金の名にふさわしい美しい競馬場
左回り1周1600mのダートコースと、1400mの芝コース。直線はともに400mで、幅員は25m。1コーナーから3コーナーにかけてゆるやかに坂を上り、3コーナーから4コーナーで下り、さらに最後の直線にまた上り坂があるタフなコース。このコースで活躍したメイセイオペラが、地方所属馬として初めてJRAのGIフェブラリーSを制覇したことも納得できます。私が初めて盛岡競馬場を訪れたのは2005年マイルCS南部杯の日でしたが、この日の覇者ユートピアも、翌年ドバイのゴドルフィンマイル(G2)を制し、引退後もアメリカとトルコで種牡馬生活を送るなど海外に羽ばたいていきました。
現在の地に移転して今年で20年。多くの中央・地方の名馬たちが戦ってきた盛岡競馬場で行われる真夏のスプリント戦『クラスターC』。それでは今年の出走メンバーをご紹介しましょう。
連覇を狙うダノンレジェンド。達成すれば、クラスターC史上初となります。去年のレース後は東京盃、黒船賞、北海道スプリントと重賞を3つ勝ち、通算で重賞7勝!2014年12月にカペラSを制したあとは1度も馬券圏内を外していません。東京スプリントではスタートで後手を踏み、3着に敗れましたが、続く北海道スプリントCではスタートを決め、2番手からの競馬。逃げたノボバカラとのゴールまで続いた一騎打ちをハナ差で制しました。その後ノボバカラは7月の中京・プロキオンSで1番人気に応えて勝利。レースレベルの高さを見せてくれました。去年の鮮やかな勝ち方を見ると向かうところ敵なしという感じですが、気になるのは60kgという今回の負担重量。力上位は間違いありませんが、スタートの良し悪しも含め、自身との戦いになりそうです。
連覇を狙うダノンレジェンドは60kgの斤量を背負っての一戦となる(写真は15年東京盃優勝時、撮影:高橋正和)
マキャヴィティは、1月のジャニュアリーS(中山・OP)を後方からの競馬で、直線大外から凄い勢いで飛んできて差し切り、ハナ差1着。前残りの流れだったことを考えると着差以上の強い内容でした。2歳時には兵庫ジュニアグランプリ2着という実績もある馬。ただ前走、4月の京葉S(中山・OP)では、1番人気で終いの伸びを欠き10着だったのが気がかり。レース間隔が開いて完調ではなかったことが敗因だとしたら、今回も4か月ぶり。仕上がり具合に注目です。
今年のジャニュアリーSの勝ち馬マキャヴィティは4か月ぶりの一戦となる(写真は13年ダリア賞優勝時、撮影:下野雄規)
そのジャニュアリーSでマキャヴィティの3着だった4歳馬、ブルドッグボス。続く太秦S(京都・OP)、千葉S(中山・OP)を連勝。ダートグレード競走初挑戦の東京スプリント4着、前走、かきつばた記念は2着と徐々に成績を上げている期待の新星。そろそろ重賞初制覇も夢ではありません。
ブルドッグボスは東京スプリント4着、かきつばた記念2着とダートグレード競走で善戦している(写真は14年オキザリス賞優勝時、撮影:下野雄規)
メンバー中唯一の牝馬、フォーエバーモア。3歳時にクイーンC(東京・GIII)を制している芝の重賞ウィナー。今回ダート4戦目で、芝を走っていた頃のコンビ、蛯名正義騎手を久しぶりに鞍上に迎えています。さらに550キロを超える大型馬のワイドエクセレントも参戦。今年デビュー3年目で、大きく成績を上げている石川裕紀人騎手とのコンビにも注目です。
14年のクイーンC優勝馬・フォーエバーモア。芝の重賞ウィナーの参戦となる(撮影:下野雄規)
地方馬からは岩手のラブバレット。昨年、ダノンレジェンドからは離されたものの3着に大健闘。その後も笠松グランプリ、トウケイニセイ記念、栗駒賞、岩鷲賞を勝つなど全国各地で活躍。地元のレースで昨年以上の走りを見せて欲しいですね。ラブバレットの鞍上は山本聡哉騎手、ヒミノコンドルには兄の山本政聡騎手、さらにアイディンパワーには弟の山本聡紀騎手(船橋)が騎乗。久しぶりの山本3兄弟揃い踏みにも注目です。
JRAのリーディングジョッキー・戸崎圭太騎手、クリストフ・ルメール騎手、ミルコ・デムーロ騎手、そして高知の別府真衣騎手、さらに金沢の吉原寛人騎手も参戦。馬たちはもちろん、騎手たちも豪華メンバーが揃ったクラスターC、見どころ満載の一戦です。
※次回の更新は8月17日(水)の18時。佐賀競馬場で行われる「サマーチャンピオン」のコラムをお届けします!
【ダートグレード競走とは】 中央競馬・地方競馬の交流を促進し、ダート適性のある実力馬の出走機会の拡大を図るため、全日本的な見地から体系づけられたダート交流重賞競走の総称。
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荘司典子
埼玉県出身。フリーアナウンサー。競馬好きが高じてこの世界へ。2001年から15年間、グリーンチャンネルで「中央競馬全レース中継」のキャスターを務める。2016年度から「グリーンチャンネル地方競馬中継」のコメンテーターとして出演。さらに全国各地の競馬場のトークイベントに参加するなど、中央競馬・地方競馬の垣根を越えて活躍中。
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