週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2004年10月19日(火) 21:49

 今週・来週と、10月30日に行われる第21回ブリーダーズCの展望を行いたい。

 今年のBCは、開催史上初めてテキサス州のローンスターパークが舞台となる。メイントラックは1周が1マイルで、直線283m。内側の芝コースは1周7Fと、かなりタイトだ。気候的にも、この時季で日中の最高気温が25〜30度。暑いというほどではないのだが、すでに冬支度の欧州とは大きな隔たりがあり、『馬場』も『天候』も欧州勢にとっては戦いにくいものとなりそうだ。

 プリ・エントリー(一次登録)は18日(月)に締め切られ、20日(水)に主催者から発表されることになっている(いずれも現地時間)。この原稿はその発表前に書いているので、触れている馬が回避する場合もあるかと思うが、平に御容赦頂きたい。

 幕開けは例年通り、牝馬によるダート9F戦『ディスタフ』。ここは、クラシックとクロスエントリーする予定のアゼリがどちらに廻るかで、様相が大きく変わってくる。

 こちらに出るようなら、中心はやはりアゼリか。かつての磐石の強さはなく、取りこぼしも目立つが、前走10月10日キーンランドのG1スピンスターSを見ても、牝馬同士ならば軸は外さないだけの安定感はある。サラトガのG1パーソナルエンサインSでアゼリを破っているストームフラッグフライングも破壊力があるが、アゼリが負けるとすれば、G1ケンタッキーオークス、G1・CCAオークス勝ち馬で、前走小回りのフィラデルフィアパークでG2コティリヨンH快勝のアシャドが勝って「世代交代」という目が一番強いように思う。

 キーンランドのG2アルシビアデスSで、ここまで無敗のセンスオブスタイルがまさかの大敗で、混戦模様の様相が強くなったのが2歳牝馬のジュヴェナイルフィリーズだ。

 中心は、道中の不利を克服して10月9日のG1フリゼットSを制した、UAE産のティンバーカントリー産駒バレットか。

 フリゼットSでバレットの手綱をとったコーリー・ナカタニは、西海岸の前哨戦G2オークリーフS(10月2日、サンタアニタ)で、勝ち馬スイートカトマインの手綱もとっている。このレースのあと、コーリーは「モンスター級」と絶賛しており、相手はこの馬か。

 シックスパーフェクションズの連覇がかかった芝のマイル。昨年はベイリーの巧さが炸裂して小回りを克服。暑さも問題にしなかったし、8月半ばのジャックルマロワ賞からぶっつけで本番というローテーションも昨年同様だが、そのジャックルマロワ賞の内容を見ると、どうも昨年の勢いはないような気がする。

 地元勢の筆頭は10月9日にキーンランドで行われたG1シャドウェルターフマイルSを鮮やかに制したナッシングトゥルーズだろうが、いかにも「ツボにはまった」印象があり、信頼度が高いとは思えない。

 それならば、フランスからの移籍馬で、北米に渡ってから3連勝で9月6日のG2デルマーダービーを制したブラックドゥーンというのは、少し狙い過ぎだろうか。アメリカ移籍後に戦っているメンバーは弱いが、フランスではアメリカンポストらと好勝負をしていた馬だ。

 ダート6Fのスプリント。実績的には10月2日にベルモントで行われた6FのG1ヴォスバーグS圧勝のピコセントラルで断然なのだが、この馬はBC登録がない。追加登録してくる可能性もあるが、現在の情勢は「回避」と伝えられている。

 そうなると中心となるのは、サラトガの7FのG1フォアゴーH快勝のマイダスアイズか。春ドバイでゴールデンシャヒーンを圧勝したアワニューリクルート、ローンスターパークで実績のあるケラ、キーンランドで10月9日に行われた6FのG3フェニックスSを制したシャンパーリなど、争覇圏にある馬は多い。

 フィリー&メア・ターフ以下の4レースの展望は、次回に。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

新着コラム

コラムを探す