地方競馬に高知の永森アリ!

2016年09月02日(金) 18:00 30


増えた2番手、3番手の騎手の活躍機会

 先週、札幌競馬場で行われたワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)に地方代表として出場した高知の永森大智騎手は、第4戦で見事な差し切り勝ち。総合3位の表彰台で「高知に永森アリ」をアピールすることになった。

 永森騎手は中央での騎乗は今回が初めて。初日はWASJの第1、2戦の2鞍しか騎乗がなかったが、2日目は第3戦の前に4鞍の騎乗を得た。騎乗を重ねるごとにレースの流れに乗れるようになってきて、第3戦を前にしての第9レースで4着に入り初めて掲示板を確保すると、続く第3戦は5着。そして最終戦での勝利につながった。

 永森騎手は、盛岡競馬場では芝のレースに騎乗しているが、中央の芝はもちろん初めて。それだけでなくさまざまなことが初めての経験で、それでいてきっちり結果を出すのだから素晴らしい。これは永森騎手だけに言えることではなく、これまでWASJ(前身のスーパージョッキーズシリーズも含めて)に出場したほとんどの地方騎手に言えること。

 それにしてもこのシリーズでは地方代表騎手の活躍が目立つ。これまで出場した地方騎手はのべ30名(第1回WSJSには地方騎手の出場はなし、昨年のWASJには2名)で、優勝4回、2位2回、3位5回。11回も表彰台に上がっているというのは、地方のトップジョッキーのレベルの高さを示していると言ってもいいのではないか。

 永森騎手がWASJの地方予選であるスーパージョッキーズトライアル(SJT)に初めて出場したのは、2012年から実施されるようになったワイルドカードが初めて。その年のワイルドカードは2位で、惜しくも本戦への出場はならなかった。そのとき、「いずれは高知1位になって直接SJTに出られるようになりたい」と話していたことを思い出す。しかし高知には赤岡騎手という高い“カベ”があり、それは容易には叶わず。それでも昨年には初めてSJT本戦からの出場となり、SJTには2度めの挑戦となった今年、地方代表の座を手にして、WASJで3位という結果を残した。

 昨年、永森騎手が高知での勝利数1位でSJTの本戦に初めて出場できたのは、絶対的な存在だった赤岡騎手が南関東での期間限定騎乗で、地元を留守にする期間があったことが大きい。

 現在地方競馬では、吉原寛人騎手(金沢)と赤岡修次騎手(高知)が、南関東での期間限定騎乗や、全国の重賞へのスポット参戦で目覚ましい活躍を見せているが、もしその制度がなければ、吉原騎手は金沢で、赤岡騎手は高知で、それぞれおそらくダントツのリーディングをしばらく続けていたに違いない。しかし全国に出て行くことで地元での勝ち星はトップではなくなり、両者とも昨年からSJTにはワイルドカードからの出場となっている。それによって昨年はSJT本戦からの出場権を得た金沢の藤田弘治騎手が、今年は高知の永森大智騎手がSJTで優勝し、WASJに出場できたというのは偶然ではないのかもしれない。ちなみに昨年の藤田騎手には、金沢で勝利数1位だった吉田晃浩騎手が怪我のため出場を辞退し、繰り上がってのSJT出場という幸運もあった。

 期間限定騎乗の制度で各地のトップジョッキーには活躍の場が大きく広がることになったが、それはある程度想像していたこと。しかし効果はそれだけでなく、絶対的存在の騎手が一時的に抜けることによって、2番手、3番手だった騎手まで活躍の機会が増えることになるとは想像できなかった。

 今回、その千載一遇のチャンスを生かして活躍につなげたのが永森騎手。「高知に赤岡アリ」は、中央のファンにもかなり知られているだろうが、「高知には永森もアリ」をアピールできたことは、高知競馬のみならず、地方競馬全体にとっても大きい。

JRA初騎乗となったWASJで存在感を示した高知の永森大智騎手(右)

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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