絶対に見逃せない一戦、愛チャンピオンS展望

2016年09月07日(水) 12:00


ブックメーカー各社が1番人気に推しているのはマインディング

 今週末、日本の競馬ファンの目はフランスに集中し、かくいう筆者も11日(日曜日)はフランスから番組をお届けする予定になっているのだが、メンバー的に見て絶対に見逃せない一戦となりそうなのが、前日の10日(土曜日)にアイルランドのレパーズタウンで行われるG1愛チャンピオンS(芝10f)である。

 ブックメーカー各社が2.75倍〜3.0倍のオッズで1番人気に推しているのが、アイルランドのエイダン・オブライエンが管理する3歳牝馬マインディング(牝3、父ガリレオ)だ。

 G1英千ギニー(芝8F)とG1英オークス(芝12F10y)を制している今春の2冠牝馬だが、オークス後に主戦のR・ムーア騎手が「ベストの距離は10Fだと思う」とコメント。この進言を受け入れた陣営はその後、カラのG1愛プリティポリーS(芝10F)から、グッドウッドのG1ナッソーS(芝9F192y)へという路線を同馬に歩ませ、いずれも古馬を撃破して連勝。マインディングは、3歳夏の段階で既に6つものG1を手中にするという、近年にないタイトル量産態勢を固めている。同馬は、同日にレパーズタウンで行われる牝馬限定のG1メイトロンS(芝8F)、翌日にカラで行われる牝馬限定のG2ブランドフォードS(芝10F)、同じく翌日にフランスのシャンティイで行われるG1ヴェルメイユ賞(芝2400m)にも登録があるが、管理するオブライエン師は愛チャンピオンS出走を表明。同馬にとって初めてとなる、牡馬と対戦が実現することになった。

 各社が4倍前後のオッズで2番人気に推しているのが、アイルランドのダーモット・ウェルドが管理する3歳牡馬ハーザンド(牡3、父シーザスターズ)だ。

 ご承知のごとく今年の春、史上18頭目となる英愛ダービー連覇を達成した馬で、つまりは、欧州12F路線における3歳世代の最強牡馬である。この馬の今年の春の躍進ぶりは、陣営の期待をも上回っていたようで、英ダービー直後には「セントレジャーを狙うのに理想的な馬。雨が降れば凱旋門賞でも好勝負出来るかもしれない」と語っていたウェルド師が、愛ダービー後には「秋の目標は凱旋門賞。これで胸を張って挑むことが出来る」とコメント。その大目標前の一戦として、ここを選択したのである。ただし、馬場は軟らかい方が良いという見立ては変わっておらず、当日のレパーズタウンが乾いて硬い馬場になるようなら、翌11日にシャンティイで行われるG2ニエル賞(芝2400m)に廻るとしている。

 続いて、各社が5倍〜6倍のオッズで3番手評価としているのが、フランスのジャン・クロード・ルジェが管理する3歳牡馬アルマンゾル(牡3、父ウートンバセット)だ。

 デビューからいきなり3連勝でLRグランクリテリウムドボルドー(芝1600m)を制した素質馬だが、本当に馬に実が入ったのは今年に入ってからで、今季2戦目となったシャンティイのG3ギシェ賞(芝1800m)で重賞初制覇を果たすと、6月5日にシャンティイで行われたG1仏ダービー(芝2100m)を制覇。この段階で陣営は、父がG1ジャンルクラガルデル賞(芝1400m)勝ち馬ウートンバセットで、母の父が全米2歳チャンピオンのマリアズモンという血統背景から、秋には10F路線のメジャータイトルを狙いたいと宣言。8月15日にドーヴィルで行われたG2ギョームドルナーノ賞(芝2000m)を使って白星で通過した上で、ここに照準を合わせて来た。ただし、ここへきて馬主の気持ちが変わってきているとも伝えられており、ここを使った後は2400mの凱旋門賞に行く可能性も取り沙汰されている。

 各社が7倍から8倍のオッズで4番手評価としているのが、ハーザンドと同じダーモット・ウェルドが管理する5歳牡馬ファッシネイティングロック(牡5、父ファストネットロック)だ。

 3歳春にダービープレップとなる重賞を連勝し、英愛ダービーにも駒を進めた馬だが、ようやくG1のタイトルに手が届いたのは4歳の秋で、昨年10月のG1チャンピオンS(芝10F)が、この馬にとって5度目の重賞制覇にして、待望のG1初制覇となった。今季2戦目となったG1タタソールズGC(芝10F110y)で2度目のG1制覇を果たした後、早目の夏休みを挟んで、8月21日にカラで行われたG3ロイヤルホイップS(芝10F)を使われ2着となっての参戦となっている。

 そして各社が8倍前後のオッズで5番手評価としているのが、マインディングと同じエイダン・オブライエンが管理する4歳牝馬ファウンド(牝4、父ガリレオ)だ。

 昨年秋にG1BCターフ(芝12F)を制して、2歳秋のG1マルセルブーサック賞(芝1600m)以来となるG1制覇を果たした同馬。4歳となった今季、2戦目のG3ムーアズブリッジS(芝10F)で自身4度目の重賞制覇を果たしたが、その後はなんとG1での2着が4回続いているという、報われないシーズンを送っている。具体的に記すと、G1タタソールズGCがファッシネイティングロックの2着。G1コロネーションンC(芝12F10y)がポストポーンドの2着、G1プリンスオヴウェールズS(芝10F)がマイドリームボートの2着と、牡馬の超一線級と戦って惜敗を続けた後、8月18日のG1ヨークシャーオークス(芝12F)でも同厩のセヴンスヘヴンの2着と、牝馬相手に走っても2着の呪縛から逃れることが出来なかった。昨年も似たようなシーズンを送り、最後の最後にビッグタイトルを手中にしただけに、ここも人気以上に走って何ら不思議ではない。

 ここまでご紹介した顔触れだけでも充分に豪華なのだが、この原稿を書いている段階では出否未定ながら、状況次第で出走の可能性があるビッグネームが他にも複数いる。

 例えば、デビュー3戦目から破竹の6連勝でG1エクリプスS(芝10F7y)を制した後、G1インターナショナルS(芝10F88y)は硬い馬場が合わずに8着に大敗したホークビル(牡3、父キトゥンズジョイ)。10月にアスコットで行われるG1チャンピオンS(芝10F)まで待つ公算が強いと見られているが、レパーズタウンの馬場が軟らかくなれば、出走に踏み切る可能性も残されている。3歳世代では、G1英ダービー2着馬で、夏休み明け初戦だったG3ロイヤルホイップSは4着だったユーエスアーミーレンジャー(牡3、父ガリレオ)も、この週末はここと、G1愛チャンピオンSのアンダーカードであるG3エンタープライズS(芝12F)、翌11日にシャンティイで行われるG2ニエル賞(芝2400m)に『トリプル登録』していて、ここに廻る可能性もゼロではない。

 更に、11日にシャンティイで行われるG2フォワ賞(芝2400m)出走が濃厚と言われていた、昨年のG1仏ダービー馬ニューベイ(牡4、父ドゥバウィ)も、当該週に入って、『愛チャンピオン参戦か?!』との噂が流れて、ブックメーカー各社が、同馬が大本命となっているフォワ賞の前売り発売を一時休止する事態が起きている。

 日本の競馬ファンの皆様も、今週末にはぜひ、アイルランドにも目を向けていただきたいと思う。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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