2004年10月26日(火) 15:17
今週は、10月30日にローンスターパークで行われるブリーダーズC後半のカードを展望したい。
まずは牝馬による芝11fのフィリー&メアターフ。ターフとダブル登録を行っており、こちらに回れば本命視されることが確実なのが、英国からの遠征馬ウイジャボードだ。春は英愛オークス連覇。その後一息入れ、3ヶ月以上の休養明けだった前走の凱旋門賞が3着と、実績面では出走予定馬の中で抜けたものを持っている。今季ここが5戦目と、シーズン末の疲労を気にする必要もなく、小回りの馬場さえ克服出来れば、この馬の勝機は絶大のはずだ。ただし、陣営はターフ出走に相当色気を示していると言われており、どちらに廻るかは蓋を開けてみなければわからない状態だ。
この馬がいなくなると、今年のフィリー&メアターフは大混戦だ。アメリカ代表は、前走サンタアニタのG1イエローリボンSを制したライトジグ。フランスからの移籍馬で、フランス時代は準重賞入着までの実績しかなかったが、今季前半にもG2ビヴァリーヒルズHを快勝するなど、移籍後は水を得た魚のような活躍を見せている。
前走G1フラワーボウルSの勝ち馬で、ビヴァーリーディーS、ダイアナHといったG1でも2着となるなど、安定した実績を誇るリスカヴァーズ。南アフリカからの移籍馬で、前走ギャラクシーS・2着後に追加登録料を支払っての出走を決めたスーパーブランド。アンドレ・ファーブルが送り込んでくる昨年の仏オークス馬ネブラスカトルネード。エイダン・オブライエンが送り込んでくる昨年の愛1000ギニー馬イエスタデーなど、メンバーは多士済々。馬券的にはどこからでも入れそうなレースである。
続く2歳牡馬とセン馬のジュヴェナイルは、プリエントリーの段階で8頭しか登録のない少数精鋭の一戦だ。1番人気が予想されるのは、フサイチペガサスの初年度産駒で、前走西海岸の最終プレップ・G2ノーフォークSを制したローマンルーラー。父譲りのスケールの大きな走りをする馬で、管理するボブ・バファート調教師が早くから期待していた逸材だ。ここで強い勝ち方をするようだと、ケンタッキーダービーが大きく視界に入ってくることになる。
これに対抗するのが、東海岸の最終プレップ・G1シャンパンSをデビューから無敗の3連勝で制したプラウドアコレイド。こちらは父がスプリンターだったイエスイッツトゥルーで、これ以上の距離延長は苦しく、ケンタッキーダービー云々という馬ではない。しかし8.5fのここなら、今年は西よりも総体的なレベルの高そうな東海岸で連勝してきた実力がモノを言う場面もおおいにあるだろう。
芝12fのターフは、3歳馬が主役だ。今季ここまで7戦6勝。勝ち鞍すべてが重賞で、ここ2戦はセクレタリアトS、ターフクラシックとG1連勝中のキッテンズジョイは、アメリカ芝戦線に久々に登場した若きスターである。強敵はアイルランドからの遠征馬パワースコート。ご存知、夏のアーリントンミリオンでは1着入線しながら、進路妨害で降着となった馬だ。今度こそ北米G1制覇と、陣営の意欲には並々ならぬものがあるはずだ。
そして、最終戦のクラシック(ダート10f)。中心となるのは言うまでもなく、連覇を狙うプレザントリーパーフェクトだ。今季も取りこぼしたのは、ドバイ遠征後の休み明けだったサンディエゴHだけ。ドバイWC、パシフィッククラシックというビッグタイトルに加え、BCクラシック連覇ということになれば、歴史的名馬としての評価を得ることになる。前走G1ジョッキークラブGCを勝って復活を果たした昨年の2冠馬ファニーサイド。今季3戦3勝の上がり馬ゴーストザッパー。同じく今季5戦5勝の上がり馬ローゼスインメイ。スマーティージョーンズの3冠を阻んだ後、真夏のダービー・トラヴァーズSも制したバードストーンなど、さすがにこの路線は層が厚く、豪華なメンバーが顔を揃えることになる。
ここに一枚加わるパーソナルラッシュ。地元メディアに「ローカルトラックでの活躍のみ」と紹介され、下馬評は極端に低い。ゴーストザッパー、ローゼスインメイなど、同型の先行馬の存在が気になるが、まったくノーマークで逃がしてくれるようなら、01年のドバイWCにおけるトゥザヴィクトリーのようなサプライズも無きにしもあらず。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。