オータムセール終了

2004年10月26日(火) 20:55

 厳しい結果になるだろうと予測はしていたのだが、終わってみるとやはり本当に事態が刻々と深刻度を増しているのを実感した。「オータムセール」は、18日と19日に当歳馬、20日より22日までの3日間でサラ、アラの1歳馬を上場した。

 当歳は、対前年度比で総売上げを約1億600万円上回る5億5671万円を計上。しかし、それは上場頭数の大幅増加(162頭から246頭)により売却頭数も増えた(46頭から65頭)ことに起因する数字で、売却率は逆に26.42%と前年より1.97%下回る結果となった。また平均価格も昨年の980万円から856万円余まで下落し、過去5年間で最も低い数字となった。

 上下の格差がかなり大きな市場だったと言えるだろう。まさに玉石混交で、高い馬は高く、安い馬は本当に安いのだ。最高は19日に上場されたマヤノゴージャスの2004。父スペシャルウィークの牡馬。三石・土田扶美子氏の生産。新冠町のノースヒルズマネジメントが2730万円で落札した。本馬はマイネルバンガードの半弟にあたる。

 最低は115万5000円で、静内農業高校生産のタニノギムレット産駒(母サクラトキメキ)。種付け料のことを考えるとこの価格ではいささか不満の残るところだが、公立高校(の生産部門?)は果たして経理がどのようになっているものなのか。

 さて、20日から22日まで開催された1歳馬市場は、サラブレッド803頭(昨年755頭)、アングロアラブ13頭(昨年49頭)が上場され、サラは228頭(昨年227頭)、アラは10頭(昨年18頭)がそれぞれ売却された。サラの売却率は28.39%(昨年は30.07%)、売上げ総額は7億1927万円(昨年は7億5826万円)。アラは売却率76.92%(昨年は36.73%)売上げ総額1050万円(昨年は2929万円)。

 今やアラブだけで競馬を開催するのは広島県福山競馬場のみとなり、この市場で落札された10頭のアラブはすべて広島県馬主会の購買だった。追記しておくが、今年9月に開催されたセプテンバーセールの二日目(9月8日)に行われたアングロアラブの市場も、118頭中92頭が落札されるという空前の売却率を記録した。しかし、購買者は1頭の例外を除きすべて広島県馬主会。ここまでくると、個別の馬の出来不出来にかかわらず、レースを組むための必要頭数を揃えることに重点を置かざるを得ない事情が透けて見える。

 ところでサラブレッド1歳は、かなり厳しい環境の中、見方によってはこれでもよく健闘したと受け止めている人がいるかもしれない。相次ぐ地方競馬場の廃止報道に揺れている現状を考慮するならば、売却率、売却頭数、売上げ総額ともにほとんど前年並みの数字を残せたのだから。

 しかし、名簿をめくりながら1頭ずつの価格を検証していくと、どうにも表情が曇ってくる。全体に安いのはこのご時世、ある程度やむを得ないところとはいえ、落札された馬のかなりの部分が種付け料と同等か種付け料にも満たない金額なのだ。まして、繁殖牝馬の減価償却や、1歳秋までに費やした労力などを思えば、曲りなりにも生産原価を確保できた馬がいったいどの程度いるものか。市場を見ていてたまに「おっこれはなかなか高いじゃないか」と思うような値段のつく馬があり、ふと名簿と照らし合わせると、種付け料だけで落札価格を上回る種牡馬の産駒だった、などという場面が多かった。

 また、このところ毎年そうだが、同一牧場から3頭、4頭(もちろんそれ以上の牧場もある)という数の上場も目立っていた。それらの上場馬が、その牧場にとって「補欠」か「主力」かで、明暗を分けることになる。1歳の秋まで主力級の生産馬を売り残していた場合は、かなり深刻だと言わざるを得ない。主力級の生産馬をすでに販売済みで、事実上の売れ残りだけを上場してきた場合ならばまだしも、オータムセールの売り上げで牧場の経営を維持しなければならない牧場にとっては、今後の金策もまた頭痛の種となっていくに違いない。

 かくして、今年も7割以上の上場馬が「主取り」に終わり、生産者にとっては厳しい年の瀬が待っている。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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