第43回別海・馬事競技大会

2016年09月21日(水) 18:00

別海馬事競技大会

ポニー少年団の記念写真

草競馬としては道東随一の規模

 9月17日(土)と18日(日)の両日にわたり、道東・別海町で恒例の草競馬である「馬事競技大会」が開催された。昨年は折からの低気圧接近による大雨に見舞われ、馬場のあちこちが水没したために、初日の平地・繋駕の部が中止となった。しかし、今年は幸いにも天候に恵まれて賑やかに2日間の日程を消化した。

 道東はもともと草競馬の盛んな地域で、今でも各地でばんえいを中心に開催されている。そのうち平地と繋駕は、中標津(8月最終日曜日)と別海が知られていたが、3年前の2013年をもって中標津が休止となり、現在、秋には別海のみが残っている。

 主催は別海町馬事愛好同志会で、後援は別海町となっているが、この草競馬は、今年で47回目を迎える別海町産業祭の一環として開催されており、町を挙げての一大イベントの中のひとつの催事という位置づけである。

 初日17日が、1周1000mのダートコースを使っての平地と繋駕で、2日目が内馬場に併設されたばんえいコースでの輓曳競技である。平地・繋駕の部は、ここでは「乗馬競技」と表記されており、午前と午後合わせて15レースが実施される。因みに翌日の輓曳の部では20レースが組まれている。

別海馬事競技大会

朝の練習風景

 北海道各地より草競馬愛好家が自慢の愛馬を馬運車に載せて、次々に会場入りすると、さっそく馬を降ろし、馬装をしてコースに繰り出し、本番前の下見を兼ねて練習を始める。

 出走馬は事前にエントリー料(平地・繋駕3000円、ばんえい5000円)を支払って、それぞれ出走予定のレースに申し込む。トロッターや、ポニー、和種(ドサンコ)が主体で、軽種馬(サラブレッド、アラ)のレースはない。

別海馬事競技大会

別海・開会式風景

 開会式は9時20分、第1レースは10時のスタートだが、レース間隔は割に短く、正午までに計8レースを消化した。

 出走馬は思ったよりも多く、第1レースの「トロッター速歩C」には7頭が出てきた。一応、出馬表はあるものの、レースの直前になってから急きょ追加されたり、逆に出走を取りやめたりするのは珍しくなく、また騎手の乗り替わりもあったりして、いかにも草競馬ならではの光景ではある。

別海馬事競技大会

レースのデッドヒート
別海馬事競技大会

ポニーキャンター直線の攻防

 日高からも毎回、別海に遠征する人々がいる。今年も浦河のポニー乗馬スポーツ少年団が9頭のポニーとともに300余キロの道のりを馬運車とマイクロバスではるばるやってきた。

 だいたい1頭が少なくとも3回は出走するようで、ポニーのレースも第2ポニーキャンター、第8ポニーキャンター中学生以下、第10ポニーキャンター浦河ポニー少年団とそれぞれレースは分かれているが、出走メンバーはほとんど同じである。

 また、トロッターも、午前に速歩、午後になると同じ馬がソルキー(馬車)を牽引して繋駕レースに出走する。

 第6レースはF1(ウマ科の異種交配による第一世代をこう呼ぶ)速歩だが、はまなす乗用馬生産組合という団体単独のレースになっており、第14レースも同じく、F1キャンターで太平洋シーサイドライン乗馬クラブの単独レースとして実施されていた。こうした単独グループのみのレースは、あるいはかつて道東の草競馬の常連として知られた畑正憲さんのムツゴロウ牧場時代からの流れを受けているのかも知れない。

 ここでは、地元でなく本州などから草競馬に出場するためにやってきたと思しき人々も大勢騎乗しており、技術はともかくも、楽しんで乗っている姿が印象的であった。速歩レースでありながら、馬を御し切れずにキャンターになってしまう場面があったり、なかなか思うように乗れない人もいたものの、まずは参加してみたいという人にとっては貴重な機会なのだろう。

別海馬事競技大会

ズラリと並ぶ露店の数々

 昼休みが1時間あり、その間に産業祭会場を見て歩くことができた。かなりの数の露店が軒を並べており、農産物、海産物、衣類、飲食店、陶磁器、乳製品などの店舗がそれぞれ盛んに客を呼び込む声が聞こえてくる。もちろんお祭り定番のお面やフレンチドック、ヨーヨー釣りなどの露店も数多くある。また中央には舞台が設置されており、そこでは伝統芸能や、幼稚園から高校生までのいくつもの学校が器楽演奏を披露していた。

 玉ねぎの大きな袋を抱えて帰る人もいれば、鮭や蟹を買い求める人もいる。かなり賑わっている印象で、別海町のみならず近隣からも多くの人々が来場しているようだ。前述したように、草競馬はあくまで催事の一環として開催されているため、必ずしもこれが主ではなく、ぶらりと見に来ては、何レースか見学し、また露店のあるエリアに戻るという観客が多かった。これで、レース毎に馬券でも発行出来たら(発売ではなく、発行である)もっともっと盛り上がる余地がありそうだ。

別海馬事競技大会

トロッター繋駕Bのレース

 午後の部は1時に始まった。第9レースはトロッター繋駕B(7頭立て)、第11レースはトロッター繋駕A(4頭立て)となっており、午前中に速歩レースに出た各馬が今度はソルキー(馬車)を牽引して走る。繋駕はかつて日本でも盛んに行われていたが、昭和40年代に競馬場から姿を消し、今ではおそらくこの道東でしか見られなくなった“絶滅危惧種”であろう。牽引する馬車とて、需要がほぼないのは明らかだから自力で手作りする以外になく、現存するものが故障でもしたら修理しながら使うより方法がない。これこそ伝統芸として保護して行かなければならないような気がする。

別海馬事競技大会

最終レースのトロッター速歩には11頭が出走

 最終第15レーストロッター速歩(無差別ハンデ)は、午後2時45分にスタートした。出走馬は11頭。距離2000m。4コーナーからスタートし、馬場を2周してゴールである。速歩ながら、11頭もの頭数になると迫力満点で、ひじょうに見応えがあった。

 幸い、雨には降られずに済んだが、午後から雲量が増してきて、北寄りの風が強くなり、涼しいを通り越して肌寒い天候であった。気温はたぶん15度以下で、風のせいか体感温度が低かった。道東はすっかり秋の気候になっていることを実感させられた。

 草競馬としては道東随一の規模を誇る別海・馬事競技大会。ぜひ一度訪れて見学されることをお勧めしたい。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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