週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2004年11月02日(火) 19:36

 正直に言えば凡戦もあった今年のBCカードだったが、一方で殊更に光り輝いていたのが、ジュヴェナイルフィリーズの勝ち馬スウィートカトマインだった。牡馬のジュヴェナイルより速い勝ちタイムでジュヴェナイルフィリーズを制したスウィートカトマイン。しかも、勝負どころの3〜4コーナー中間で前が塞がるアクシデントがありながら、これをモノともせずに3.3/4馬身差の圧勝を演じたレース振りは、まさしくこの日の「スター・オヴ・ザ・デイ」と言うに相応しいものだった。

 今年のジュヴェナイル・フィリーズ。戦前の下馬評は、西海岸の最終プレップ・オークリーフS勝ち馬スウィートカトマイン、東海岸の最終プレップ・フリゼットS勝ち馬バレート、フリゼットSで初の敗戦を喫するまでG1メイトロンSを含めて3連勝していたセンスオヴスタイルの三つ巴。もしくは、これに中部地区で2戦2勝のクリナリーを加えた4頭の争いと見られていたのだが、実際は、スウィートカトマイン1頭だけ次元の違う強さを持っていたようだ。

 馬主マーティン・ウィゴット氏のオーナーブリーディングホースであるスウィートカトマイン。ウィゴット氏の本拠地はカリフォルニアのリヴァー・エッジ・ファームだが、スウィートカトマインはケンタッキー産馬。やはりウィゴット氏の所有馬だった母スウィートライフが、G1ビヴァリーヒルズH・2着などの成績を残して引退した時、ぜひともストームキャットを付けたいとしてケンタッキーに供用。期待通りにストームキャットを受胎し、02年春にスウィートライフが生んだ初仔がスウィートカトマインなのである。

 今年7月にデルマーのメイドンでデビューし2着に敗れたにも関わらず、次走はG1のデルマーデビュータントにぶつけられ、ここを見事に勝ち上がった。陣営の期待も高かったのだろうが、その期待に応えてG1で初勝利を上げたスウィートカトマインも、この段階で既にタダモノではない。

 続いてスウィートカトマインは、10月2日にサンタアニタで行われたG2オークリーフSに出てここを快勝するのだが、この時のレース振りがまた圧巻だった。ここで初めてスウィートカトマインの手綱をとったコーリー・ナカタニ騎手が、レース後「この馬はモンスター級かも」と絶賛。お調子者のコーリーが言うことだからと、周囲は眉に唾をつけてこの言葉を聞いていたのだが、どうやら掛け値なしの評価だったようだ。

 巷では、「牡馬戦線は不作」との声が囁かれ始めたアメリカの02年生まれ世代。少なくとも現状において、これを覆す反証に乏しいことは確かで、いきなりケンタッキーダービー云々を持ち出すのは無謀だとしても、ラン・フォー・ローゼズのどこかでスウィートカトマインを牡馬にぶつけてみたいと思っているのは、私ばかりではないはずである。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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