1歳馬展示会

2004年11月02日(火) 19:45

 11月1日付けで次のような文書が送付されてきた。「1歳馬展示会・開催のご案内」というもの。送付先は日高軽種馬農協組合員各位。送り主は北海道市場(日高軽種馬農協・北海道市場事業部)である。

 内容は、つまり未売却の1歳馬(サラ、アラいずれも。ただし血統登録を済ませたものに限る)を11月19日に静内・北海道市場に集め、「市場」ではなく、「展示会」を実施し、購買者に見て頂こうという趣向だ。出品申し込み料は3000円。11月5日までにFAXにて北海道市場事業部あてに申し込むこと、とある。

 恐らく、日高軽種馬農協内部で各生産者(組合員)が抱えている未売却馬の処遇について論議した結果、このような(何とも中途半端な?)販売機会を作ってはどうか、との結論に達したのだろうと思われる。

 「展示会」である以上、北海道市場は、ただ場所を提供するだけである。事前に(11月10日頃というが)申し込みのあった1歳馬を一覧表にまとめ、全国の関係者あてに送付するという。各生産者は、自身の生産馬についての販売用資料(ブラックタイプの血統表など)をそれぞれ用意することとある。そして、「展示会に出品した展示馬に関する、事故、トラブル等の責任については、主催者は一切負わないものとします」と注意事項に明記してある。

 果たしてどれだけの申し込みがあるものか、何とも予測できないところだが、実際に未売却馬は1歳に限ってもかなりの数に上るだろう。

 先月開催された「オータムセール」に、各生産者が抱える未売却の1歳馬がすべて集まってきたわけではない。このところの低迷を続ける市場売却率に嫌気がさして、早々と来年のトレーニングセールへ照準を合わせ育成牧場に移動している馬もいるし、道営あたりに入厩させるか、それともどこかの育成牧場に預け、調教を進めながら購買者を探すか、などというように未だ方針を決めかねている生産者も多い。

 一つだけ言えることは、それらの未売却馬にもし希望価格で売って欲しいという顧客がついたら、すぐにでも手離したいとみんな考えているということ。ただ、現実問題としてこの欄でも幾度となく触れているように、続々と伝えられる地方競馬の廃止問題が、主として平均以下の水準にある1歳馬の需要に大きな影を落としていることだけは確かで、もはや「価格が高いか安いか」というよりも、「レースに使える競馬場が残っているかどうか」という問題の方が実は深刻なのである。

 私自身も先日、身をもってそれを経験した。とある地方競馬の馬主に購入してもらった1歳馬の入厩先として予定していたらしい某競馬場に存廃問題が浮上し、しかも見通しがかなり暗そうだとあってその馬主は「できればキャンセルしたい」などと言い始めたわけである。何をいまさら…とは思ったものの、下手に喧嘩をしてしまえば本当にキャンセルになりかねず、何とか穏便にことを収拾するべくずいぶん気を遣った。恐らく日高のあちこちで、今年はこんな話が噴出していることだろうと思う。

 折から先月末に、道営ホッカイドウ競馬のあり方を審議する知事の諮問機関「道地方競馬運営委員会」(委員長・小林好弘札幌大学教授)が、平成17年度の道営競馬運営計画策定に向けて道側に対しゴーサインを出したことが報じられていた。道営ホッカイドウ競馬の今年度の売上げは、コスモバルクなどの活躍も後押しして昨年を2億円程度上回る112億9千万円に達する見通しだという。

 とりあえずはまた少し首が繋がったわけだが、決して楽観できる数字とは言い難い。来る11月12日(金)には、門別競馬場にて「道営競馬トレーディングセール」も開催されることになっており、上場馬は79頭(認定勝馬16頭を含む)が予定されているが、いくつかの地方競馬の動向がまだ流動的な現状ではこれら即戦力の現役馬たちの需要もかなり不透明なものだろう。

 1歳馬のみならず、現役馬もまた中央下がりを含め、完全に供給過剰の状態なのだ。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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