キョウエイギア号優勝祝賀会

2016年09月29日(木) 18:00 19

キョウエイギア号優勝祝賀会

キョウエイギア号優勝祝賀会の集合写真

青森産馬としての快挙

 昨夜(28日)、青森県八戸市で、去る7月13日に大井競馬場で行われた第18回ジャパンダートダービー(Jpn1)を制したキョウエイギアの優勝祝賀会が開催された。

 同馬の生産者は県内三戸郡階上町の村上幹夫さん。父ディープスカイ、母ローレルアンジュ、母の父パラダイスクリークという血統の牡3歳馬である。馬主は田中晴夫氏。栗東・矢作芳人厩舎所属。戸崎圭太騎手が手綱を握り、4番人気ながら2着馬に4馬身差をつける完勝で、キョウエイギアに初めてのG1タイトルをもたらしてくれた。

 青森産馬としては実に2004年2月、川崎記念を制したエスプリシーズ以来の快挙という。それだけに生産者の村上さん始め、県内関係者の喜びはひとしおで、レース後早々に「祝賀会をぜひ当地で開催しよう」という機運が盛り上がったと聞く。

 主催は青森県軽種馬生産農協青年部。部長の佐々木拓也さん(スプリングファーム代表)を中心に、同生産農協が事務局を務め、さっそく準備にとりかかり、このほど実現したというわけである。

キョウエイギア号優勝祝賀会

ワールドファーム全景

 市内の「きざん八戸」を会場に、関係者約55名が集まり、午後6時半よりキョウエイギアの栄誉を称える優勝祝賀会が開始された。用意された6つの卓にはそれぞれ、村上幹夫さん個人というより、村上家で営むワールドファームの過去の代表的な生産馬(キョウエイギアを筆頭にローレルアンジュやカッツミーなど)の馬名が充てられ、それぞれ所縁の人々が席に着いた。馬主の田中晴夫氏と同馬を管理する矢作芳人師も姿を見せ、並んでステージ正面の卓に着席している。水曜日とあって戸崎騎手こそ出席はできなかったが、キョウエイギアと村上家に縁のある人々が参集し、GCの競馬番組などで知られる浅野靖典氏の司会で祝賀会がスタートした。

キョウエイギア号優勝祝賀会

青森県軽種馬生産農協青年部長・佐々木拓也氏

 冒頭、主催者を代表して佐々木拓也氏が挨拶し、続いて来賓の青森県軽種馬生産農協・山内正孝組合長が祝辞を披露して乾杯の音頭を取った。

 祝宴半ばでは、ステージに用意された大型スクリーンにキョウエイギアのデビュー戦からジャパンダートダービーに至るまでの戦歴をまとめたVTRが放映された。とりわけ、ジャパンダートダービーの最後の直線で、キョウエイギアが武豊騎手騎乗のケイティブレイブを置き去りにして独走態勢でゴールすると、期せずして出席者から盛んな拍手が巻き起こった。

キョウエイギア号優勝祝賀会

祝賀会場の全景

 また、主催者が用意した豪華景品10個を賭けてのビンゴ大会も行なわれ、数字がひとつ出る度に一喜一憂する声が会場に響き、大盛り上がりであった。余談ながら、今回初めて見たのだが、今はスクリーン上にて予め全ての数字が一覧表で並んでおり、ひとつずつアトランダムにピックアップされるとすぐに当該番号の表示が色分けで示されるので、見逃したり聞き逃したりしても慌てる必要がない(これが標準なのかも知れぬが)。

キョウエイギア号優勝祝賀会

田中晴夫オーナー

 祝宴もたけなわになった頃、謝辞に立った田中晴夫オーナーは「馬主になって35年経ちますが、こんな嬉しいことはありません」とキョウエイギアのG1制覇を率直に喜び、微笑んでおられたのが印象的であった。

 続いて矢作芳人調教師がマイクの前に立ち「青森は父(大井競馬の矢作和人元調教師。長らく全国公営競馬調教師会連合会会長を務める)に連れられて子供の頃に来て以来ですが、私は良い馬がいればどこにでも見に行きますので、ぜひまた活躍馬を生産して頂きたい」と青森の生産界にエールを送った。

 なお、キョウエイギアを当歳時に牧場で見た大井のある調教師によれば「とにかく他の当歳とは比較にならないくらいにバランスが良く、骨格もあり抜けた姿をしていた」と以前筆者に語っていたのを思い出す。また同馬を1歳秋から育成した浦河のシュウジデイファーム・石川秀守代表は「脚元は確かに硬い馬だったものの、調教では本当に良く動く馬で素質を感じました」と振り返る。

 矢作調教師はそうした同馬の潜在能力を見事に開花させ、G1馬にまで育て上げたわけで、1頭のサラブレッドが出世して行く過程でどんな人々がどう関わるかによっても、その後の競馬人生が大きく変わってくることを改めて教えられたような気がする。

 言うまでもなく矢作師は、今や押しも押されもせぬ日本のトップトレーナーとして頂点に立っており、戸崎騎手もまた南関から中央に移籍し、ダントツで首位を行く当代きっての乗り役である。もともと素質の高さはあったにせよ、キョウエイギアはいわばこうした環境にも恵まれたと言えるだろう。

 ちょうどタイミング良く、今週末には2ヶ月半ぶりにシリウスステークスにミルコ・デムーロ騎手で出走予定である。矢作師は、「まず暮れの東京大賞典を目指し、来年は、ドバイあるいはアメリカ遠征などにもチャレンジできれば良いなと思っています」と今後のローテーションについて語っていた。

キョウエイギア号優勝祝賀会

謝辞を述べる生産者・村上幹夫氏

 最後に生産者である村上幹夫さんがステージから「ジャパンダートダービーの直後に地元の生産者仲間から数多くのお祝いの電話がかかってきて、みんな自分のことのように喜んでくれたのが何より嬉しい出来事でした。これからも益々良い馬を生産できるように努力して参りますので宜しくご指導ご鞭撻下さい」と結んだ。

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万歳三唱でお開き

 青森の生産者にとっても、久々のG1馬が地元から誕生したのは何より大きな励みになったはずで、次は自分の牧場の生産馬で祝賀会をやりたいとの思いを深めたであろうことは疑いない。決して大手牧場の生産でもなければ、ディープやキンカメといった超一流種牡馬の産駒でもない馬であっても、こうしてG1タイトルを手にするところに、競馬の持つ不思議な魅力がある。何より、「自分たちでも手の届くところから出た馬」がこうして活躍してくれることが、地元生産者にとっては明日への大きな活力となるのである。心温まる祝賀会であった。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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