2004年11月09日(火) 16:10
今週月曜日、ジャパンCとジャパンCダートに向けた招待受諾馬の第一次リストが発表された。なかなかの好メンバーだと思うが、最大の朗報はパワースコートの参戦決定だろう。有力馬の争奪戦において、近頃は香港の国際競走に押され気味と言われていたジャパンCだが、ワンパンチを強烈なクリーンヒットでお返しすることが出来たと思う。
パワースコートの参戦とは、すなわちアイルランドのリーディングトレーナー、エイダン・オブライエンのジャパンC初参加を意味する。
エイダン・オブライエンについては、今さらくどくど述べる必要もあるまい。23歳の時にトレーナーライセンスを取得し、開業2年目に障害のチャンピオントレーナーの座に輝くと、以後5年間その座を譲らず。アイルランドの巨大帝国クールモア・グループの総帥ジョン・マグナー氏に見込まれて、徐々に平地の競走馬を手がけ始め、96年からバリードイルの専属調教師となった。バリードイルとはクールモアの調教基地で、かつては伝説の調教師ヴィンセント・オブライエン(エイダンと血縁関係はない)が陣頭指揮を執っていた場所だ。
その後は、質量ともに豊富な軍団を率いて大レースを勝ちまくり。圧巻だったのが01年で、春に欧州各国で行われる3歳クラシックに7勝。最終的にこの年欧州で行われた78のG1のうち実に28%にあたる22レースを制覇。この年はイギリスにおいてもリーディングトレーナーになったが、他国にベースを置く調教師としては1977年のヴィンセント・オブライエン以来24年ぶりの快挙だった。
そんな大物が、これまでJC未参加だったのだ。JRAでは、ロンドン事務所を橋頭堡として熱心にアプローチを繰り返してきたのだが、障害馬も手がけていた調教師なので、障害シーズンがいよいよ繁忙期にさしかかろうという11月末、国外のレースは眼中に入っていなかったのかもしれない。
厩舎まで足を運んで日本の競馬事情を説明し、映像資料など利用して説得にあい努めた結果、エイダンの心がようやく動き始めたのが昨年だった。G1・6勝の強豪ハイチャパラルの来日が、実現寸前まで漕ぎつけたのだ。
そして今年、欧州中長距離路線の有力馬で、府中の馬場も合いそうなパワースコートを率いての初来日が実現する運びとなったのだ。御苦労をされたロンドン事務所の皆様には、心からの敬意を表したいと思う。まだフルメンバーが確定していないので断定的なことは言えないが、現時点では私は、パワースコートをJCの本命にしたいと考えている。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。