週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2004年11月16日(火) 12:44

 今週は、ジャパンCに出走を予定している外国馬の、実力は度外視して、レースに対する適性のみを分析してみたい。

 左廻りコースに対する適性では、ここまで制したG1が全て左廻りというウォーサンが文句なしで最上位。ウッドバインでG1勝ちのあるフェニックスリーチ、サンクルーでG2勝ちのあるリュヌドール、同じくサンクルーでG1・2着のあるポリシーメイカーらも問題はなさそうだ。

 若干不安があるのがパワーズコート。左廻りでのG2勝ちやG1・2着はあるものの、いずれも広くて直線の長いコース。ご存知のように、この夏のアーリントンミリオンはゴール前で大きく内に斜行して降着。前走BCターフでも直線で内に寄れてキッテンズジョイの進路を妨害しており、左廻りでは苦しくなると内にささるクセを見せている。鞍上ジェイミー・スペンサーの手腕が問われるところだ。

 一方、硬い馬場での時計の速い決着に対する適性が最も高いのが、パワーズコートだ。関係者から「なぜもっと水を撒かないのか」と不満の声が出た今年のロイヤルアスコットで、G1プリンスオヴウェールズS・2着。降着になったとは言え、アーリントンミリオンでも10Fを2分00秒08で駆けており、硬い馬場に対する適応力はありそうだ。パンパン馬場で走った経験はないものの、血統的には問題なさそうなのがリュヌドール。硬い馬場で行われたイタリアのG1ミラノ大賞2着の成績はあるものの、連覇を果したコロネーションCがいずれも適度に湿り気を帯びたヨーロッパの良馬場だったウォーサン。快勝したバーデン大賞がSoft、10Fという適性よりも短い距離で2着と好走したエクリプスSがGood to Soft だったことを考えると、昨年ほどの降水量を必要とはせずとも、ひと雨欲しいことは間違いない。

 一方、これまで制した3重賞がいずれもSoftかGood to Soft 。馬場が良かった前走の凱旋門賞が最下位の大敗というポリシーメーカーには、硬い馬場に対する適性に疑問符が付く。昨年カナダでG1を制した時がやや重で勝ち時計も遅かったフェニックスリーチも、馬場の硬かった今春のアスコットで走った2戦がいずれも大敗だったのを見ると、良馬場では苦しそうだ。

 遠征に関して言うと、昨年秋にカナダでG1を制しているフェニックスリーチが適性最上位。香港ヴァーズ3着の成績があるウォーサン、フランス調教馬ながらイタリアでG1勝ちのあるリュヌドールも心配はなさそうだ。

 一方、やってみなければわからないのが、フランスの外に出たことがないばかりか、これまで出かけた最も遠い競馬場がドーヴィルというポリシーメーカー。

 微妙なのが、今年アメリカに2度遠征し、1回目が1位入線・4着降着、2回目が出遅れた上に早仕掛けで3着というパワーズコートだ。斜行や出遅れの原因が、遠征先の不慣れな環境で心を乱していたせいだとしたら、初めての日本に戸惑う心配がある。

 適性を総合的に評価すると、どの項目にも特に強調できる材料があるわけではないが、大きな弱点もないのがリュヌドール。これに次ぐのがウォーサンで、不確定要素が多いのがパワーズコート。失点が多く強調しづらいのがポリシーメイカーということになる。

 次週は、これに実力を加味した総合評価を下してみたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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