東京と笠松、そして高崎

2004年11月30日(火) 15:54

 先週は久しぶりに数日間留守をした。地方競馬関連の集会が東京と笠松(岐阜県)で開催され、パネラーとして招かれていたので参加してきたのである。

 21日(日)は、東京で「ハルウララ奪還総決起大会」と題するイベントが、新宿歌舞伎町のライブハウス「ロフトプラスワン」にて開催された。“ハルウララ奪還”とは何とも勇ましいタイトルだが、要するに、この稀代の脱力系アイドルホースを巡る最近の動きを中心に、地方競馬全体の話題を取り上げ話し合うといった内容で、出席したのは、大月隆寛氏(司会)、私、橋口浩二氏(高知競馬アナウンサー)、川崎競馬場から女性が二人、の計5人である。

 ロフトプラスワンは、新宿コマ劇場の真向かいにあるHビル地下2階。こうした小規模なイベントに利用される空間らしく、内部はぎっしり席を埋めても100人は入るかどうかという広さだ。そこに、この日集まったのはざっと40人ほど(しかもそのうち10人は北関東の高崎と宇都宮両競馬場から来た厩舎関係者)。進行は大月氏が務め、彼が自身で取材してきた高知競馬の宗石大調教師へのインタビュー映像や、私の用意した「報道特集・お先まっくら地方競馬」(TBS系、1984年12月放映)のVTRなどを合間に流しながらの延々4時間に及ぶトークショーとなった。

 “総決起大会”とは言い難い少人数の集会で、終わってみれば地方競馬に関連した幅広いテーマについて好き勝手に思いついたことを参加した観客とやりとりしただけのような気もするが、多くの人々にとって最大の関心事は、ライブドア参入が視野に入ってきた今後、地方競馬はどうなって行くのか?ということ。とりわけ、北関東の高崎、宇都宮両競馬場の関係者にとっては、廃止報道の渦中にいるだけに自分たちの今後の生活を大きく左右する極めて重大な問題であり、だからこそはるばる新宿まで遠征してきたのだろう。この人たちに、このイベントがどのように映ったものやら何とも自信が持てないのだが、来る12月3日(金)には、地元高崎で「高崎競馬の未来を語る討論会」なる集会が開催される予定である。(高崎市労使会館3Fホール、午後7時開始)

 さて、新宿の二日後、23日には岐阜県笠松町に足を伸ばした。全日本サラブレッドC(交流重賞)の組まれたこの祝日(勤労感謝の日)は、レース後に近くの笠松町中央公民館にて「笠松競馬を未来につなげる集い」と題するシンポジウムが開催され、こちらでもパネラーとして参加することになったからである。

 午後5時半から始まったこの集会には、冒頭、レースを終えたばかりの笠松所属の騎手が勢揃いし、登壇して集まった聴衆に挨拶する場面から始まった。

 第1部の「ファンとマスコミによるシンポジウム」に出席したのは、私の他、梅林敏彦氏(ライター、『競馬・最強の法則』12月号に笠松競馬レポートを執筆・掲載している)、白石邦嗣氏(中京スポーツ記者)、佐々木勲氏(ファン新聞「うまなり」主宰者)、斎藤修氏(「ハロン」編集長)、そして、特別パネラーとして安藤勝己騎手。それぞれの立場から笠松競馬の魅力や重要性などについて語ったのだが、やはり「アンカツ」の集客力は抜群だった。「26年間ここで乗りました。今の私があるのは笠松のおかげです」という彼の台詞は心に染みた。

 第2部は「笠松競馬で働く人たちの声を聞こう」と題し、現場の様々な人々が演台に立った。調教師、厩務員、獣医師、場立ちの予想屋、場内飲食店経営者、馬主などが必死の訴えを行い、予定した2時間はあっという間に過ぎ、盛会のうちに終了した。約350人分用意した椅子もすべて埋まり、かなりの人数が立ち見を余儀なくされるほどの賑わいで、とりあえずは大成功だったのではないだろうか。

 笠松のこの集会を企画し準備に奔走したのは、名古屋市在住の今井登喜江さん。司会は「笠松競馬を未来へつなごう」という応援サイトを主宰する大西貴子さん。こうした、熱心な一般ファンの方々がこの集会を支え、盛り上げる原動力になったのだ。純粋に笠松競馬を愛するこれらの人々が、手弁当で作り上げた集会であることに私もかなり驚かされた。現場で働く人々や私のような生産者、あるいはマスコミ関係者にしても必ずどこかで自身の“仕事”とつながっているわけだが、この人たちはいわばまったくの「趣味」の世界の話であり、それだけに心打たれるものがあったのである。

 最後にもう一度、高崎のことについて触れる。来る12月3日、高崎市労使会館にて午後7時より、「高崎競馬の未来を語る討論会」というイベントが開催予定である。司会は大月隆寛氏という。盛会を祈りたい。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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