2016年12月06日(火) 18:01 17
12月7日(水)船橋競馬場で行われる冬の女王決定戦『第62回クイーン賞(JpnIII・ハンデ戦)』。近年の傾向を見ると勝ち馬こそJRA勢が優勢ですが、地方勢が2、3着の馬券圏内に来ることが多いレース。
2011年には船橋のクラーベセクレタが3歳で勝利し、翌2012年も2着。また2012年には高知のアドマイヤインディが12番人気で3着、2010年には笠松のトウホクビジンが10番人気で3着に入るなど負担重量の軽い地方馬が波乱を演出することもあり、地方馬を抜きにしては語れない一戦です。
今回はまず、2009年に川崎所属で勝利したユキチャンの思い出を振り返ります。
白毛のアイドルホースユキチャンは、父クロフネ。母はサンデーサイレンス産駒の白毛馬として話題を集めたシラユキヒメの仔として生まれ、JRAからデビュー。2008年3歳時には関東オークスを制し、白毛馬による重賞初制覇を果たします。
▲白毛馬による重賞初制覇となった2008年の関東オークス(撮影:高橋正和)
その後も同年のクイーン賞2着、2009年TCK女王盃2着などダートグレード競走で上位争い。2009年10月には川崎に移籍し、地方競馬のユキチャンとして人気はますます高まっていきました。
2009年12月のクイーン賞当日。1番人気に推されたユキチャン。船橋競馬場の場内では彼女にちなんだ“白いたいやき”まで売られるほど。2番人気は前年の覇者ヤマトマリオン。3番人気は船橋のテイエムヨカドー。4番人気は初ダートでの参戦、芝の重賞ウイナー(2009年京都牝馬S)チェレブリタでした。
▲ユキチャンにちなんだ“白いたいやき”も登場!
レースはシスターエレキングが先手を取り、2番手にテイエムヨカドー。ユキチャンは4番手からの競馬。向正面でじわじわと押し上げ、4コーナーを回る時点ではユキチャンとテイエムヨカドーの2頭が抜け出し直線は一騎打ち。内テイエムヨカドー、外ユキチャンの長い競り合いを制し、前年2着の雪辱を果たしました。クビ差2着に食い下がったテイエムヨカドー。さらに3馬身離れた3着は船橋のパノラマビューティ、4着チェレブリタ、5着ヤマトマリオンで、地方馬のワンツースリー!
▲▼鞍上今野騎手の渾身の騎乗、テイエムヨカドーとの大接戦を制して勝利(撮影:高橋正和)
川崎に移籍して2戦目で、関東オークス以来となる勝利を挙げたユキチャン。コンビ2戦目の今野忠成騎手も「パドックでもず~っとカシャカシャってシャッターの音がして。こんなに写真を撮られたのは初めてだよ」とその人気ぶりに笑顔。管理する山崎尋美調教師は「アイドルホースがやっと女王になれてホッとしています」と胸をなで下ろしていました。
▲クイーン賞のパドック、ユキチャンを見にたくさんのファンが駆けつけた
翌年2010年のTCK女王盃も制し重賞3勝目を挙げ、同年のNARグランプリ最優秀牝馬を受賞。5月の川崎マイラーズ(9着)を最後に引退し、故郷のノーザンファームで繁殖入り。白毛の遺伝子を産駒に繋いでいます。
今年出走を予定している地方馬たちも、2009年に負けず劣らず上位を賑わしてくれそうな好メンバー。ということで、今回は地方勢からご紹介しましょう!
南関東勢ではまずララベル。ローレル賞、東京2歳優駿牝馬、浦和桜花賞、ロジータ記念、しらさぎ賞と、南関東重賞5勝を挙げている4歳馬。ダートグレード競走初挑戦だったレディスプレリュードでは4着でしたが上位の馬たちとの差は僅か。JBCレディスクラシックは直前に無念のリタイアとなってしまいましたが、リベンジに期待します。
鞍上は(怪我で乗れなかったしらさぎ賞以外)デビューから手綱を握っている真島大輔騎手。真島騎手が「この馬は引退するまで僕が乗ります!」と、惚れ込んでいる存在。本番で期待以上の走りを見せてくれる馬で、万全の状態であれば当然中心に推せる1頭です。
▲2015年のロジータ記念優勝時、主戦の真島騎手もその素質に惚れ込んでいる(撮影:高橋正和)
ララベルと同じ荒山勝徳厩舎から、東京プリンセス賞を制した3歳馬リンダリンダも参戦。前走・ロジータ記念はミスミランダーの2着。ハンデ戦で最軽量51kgなら上位争いに加わってきそう。
そのロジータ記念を制したミスミランダー。関東オークスでタイニーダンサーの2着となったのち、8月には牡馬を撃破し黒潮盃を制覇。今年の夏から秋にかけて一番の上がり馬。52kgというのも好材料。
▲注目の上がり馬! 2016年のロジータ記念を制したミスミランダー(撮影:高橋正和)
昨年3着のノットオーソリティ。成績不振が続いていますが、叩き3戦目51kgで昨年のような走りを見せてくれるかも。
兵庫のトーコーヴィーナスも忘れてはいけません。9月のレディスプレリュードでホワイトフーガと2着同着になった力強い走りは記憶に新しいところ。古馬牝馬戦線で上位の実力があることは間違いありません。
ホッカイドウ競馬からは前走・道営記念の2頭が参戦! 勝ったタイムビヨンドが破った相手は、今年のホッカイドウ競馬で連戦連勝の大活躍をしたオヤコダカや2冠馬スティールキングら牡馬の強豪たち。3連勝の勢いでダートグレード競走に初挑戦。
道営記念3着のジュエルクイーン。2歳時にはエーデルワイス賞2着があり、今年8月のブリーダーズゴールドCでは地方馬最先着の4着。こちらも負担重量51kgです。
対するJRA勢も魅力的。ヴィータアレグリアは3月のエンプレス杯でアムールブリエの2着。続く4月のマリーンCを制し重賞初制覇。船橋で結果を出していることも心強く、人気を集めそうな1頭。
▲船橋での実績が心強いヴィータアレグリア、写真は2016年マリーンC優勝時(撮影:高橋正和)
トロワボヌールは一昨年の覇者。昨年も2着に健闘したのち休養に入り、休養明け2戦目の前走・JBCレディスクラシックは5着。少しずつ調子を上げ、今回は走り頃。トップハンデ56kgですが、負担重量自体は昨年(56.5kg)より軽くなっており、得意の船橋で巻き返しがありそう。
昨年エーデルワイス賞と北海道2歳優駿を制しNARグランプリ2015・2歳最優秀牝馬に選出されたタイニーダンサー。3歳になって中央に移籍後3戦目の関東オークスを勝利。近走は古馬の壁に阻まれている印象ですが、ダートグレード競走3勝の実績を考えたら侮れない存在です。
クイーン賞は来年1月の大井・TCK女王盃、3月の川崎・エンプレス杯へと続く牝馬重賞戦線に繋がっていく戦い。JRA勢も地方勢も目移りする好メンバーが揃った大混戦で、馬券的妙味もありそう。ぜひ馬券を買ってご参戦ください!
※次回は12月13日(火)14(水)18時に連続更新。川崎競馬場で行われる「全日本2歳優駿」、名古屋競馬場で行われる「名古屋グランプリ」のコラムをそれぞれお届けします。
【ダートグレード競走とは】
中央競馬・地方競馬の交流を促進し、ダート適性のある実力馬の出走機会の拡大を図るため、全日本的な見地から体系づけられたダート交流重賞競走の総称。
荘司典子
埼玉県出身。フリーアナウンサー。競馬好きが高じてこの世界へ。2001年から15年間、グリーンチャンネルで「中央競馬全レース中継」のキャスターを務める。2016年度から「グリーンチャンネル地方競馬中継」のコメンテーターとして出演。さらに全国各地の競馬場のトークイベントに参加するなど、中央競馬・地方競馬の垣根を越えて活躍中。