2016年12月07日(水) 12:00
今週最初にご紹介するのは、現地15時50分、日本時間16時50分発走の、G1香港マイル(芝1600m)だ。
先週の冒頭に記したように、今年の香港4競走は大雑把に分けて、しっかりとした軸馬がいるのが2レース、混戦模様なのが2レースという様相を呈しているが、マイルは文句なしで後者である。
レイティングで言うと、119から115の間に、出走14頭中の実に13頭が収まっているのだ。どこかのブックメーカーが1番人気に推している馬が、少なくとも5頭はいるし、あるいは、大手のパディーパワーなどは、ひと桁台のオッズになんと7頭を並べている 昨年のこのレースと、今年春のG1チャンピオンズマイル(芝1600m)を制しているモーリスが、ここに出ていれば大本命だったのだが、カップに廻ったがゆえに生じた大混戦である。
最大のポイントは、エイブルフレンド(セン7)の取捨であろう。
14/15年シーズンの香港年度代表馬で、4つの国際G1を含む重賞9勝。かつてはSコラムとMコラムの両方で125という、香港調教馬として歴代最高のレイティングを保持していたのがエイブルフレンドである。ところが、昨年のこのレースで3着に敗れた後、屈腱炎を発症して戦線を離脱。管理するジョン・ムーア師の故郷である豪州に渡って治療が施され、11月20日のG2ジョッキークラブスプリントで復帰。道中7番手から、直線で一旦は伸び掛かる仕草を見せた後、勝ったノットリスニントゥーミーから2.1/4馬身差の4着となっている。11か月振りの競馬にしては、上々というのが大方の見るところで、なおかつ、2日(金曜日)に参加したバリアトライアルでの動きもよく、この馬が戻ってきたならば、この馬が軸と考えるファンは多いようだ。
その一方で、休み上げだったにも関わらず、マイナス16ポンド(=7.26キロ)の馬体重で出てきたこと、年齢的に衰えも懸念されること、などから、この馬を「信じきれない」と見るファンもいる。
格的には、昨シーズンの香港4歳シリーズ2冠馬で、前哨戦のG2ジョッキークラブマイルが、短頭+首差の3着だったサンジュエリー(セン5)、G2ジョッキークラブマイルを制して香港で3度目の重賞制覇を果たしたビューティーオンリー(セン5)、今年5月のG1チャンピオンズマイル2着馬で、G2ジョッキークラブマイル4着のコンテントメント(セン6)あたりが上位で、各々争覇圏に入ってくる馬たちである。
ここに、3頭の日本馬がどう絡むかだ。中でも、「今年に入ってモーリスを負かした馬」という触れ込みとともに出走するのが、ロゴタイプ(牡6)とネオリアリズム(牡5)の2頭である。ことにネオリアリズムは、前走のG1マイルCSでも健闘しており、同厩のモーリスの名代として注目を集めることになりそうだ。
現地16時30分、日本時間17時30分の発走となるのが、香港国際競走のトリを飾るG1香港カップ(芝2000m)である。
レイティング的に抜けているのが、昨年に続くこのレース連覇を狙うエイシンヒカリ(牡5)である。外枠不利と言われるシャティンの2000mコースで、11番枠から出て逃げきり、ステークスレコードを樹立した昨年のレースは、鞍上の腕を含めてまさに超絶のパフォーマンスであった。これに輪をかけて素晴らしかったのが、後続に10馬身差をつけた今年5月のG1イスパーン賞(芝1800m)で、世界中が度肝を抜かれたこれらのレースを再現出来れば、この馬を止めるのは至難の業だ。前走のG1天皇賞・秋(芝2000m)では12着に敗れたが、1年前も同じレースで9着に敗れた後の参戦で、負け戦の内容をうんぬんするのは、この馬の場合あまり意味がなさそうである。
エイシンヒカリがマックスの能力を発揮したとして、この馬の連覇を力で阻止できる馬は、モーリス(牡5)をおいて他にいない。G1天皇賞・秋(芝2000m)で、昨年のG1香港マイル以来久しぶりに騎乗したライアン・ムーアが、「更に進化していると感じたし、距離も2000mの方が合うと思った」と語り、そのムーアが今回も手綱をとるとあれば、大きな期待を寄せないわけにはいかない。
かなうものならば、日本馬2頭が至高の戦いを繰り広げてくれることを祈ってやまない。
15/16年の香港年度代表馬ワーザーを怪我で欠く地元勢は、いささか旗色が悪いが、前哨戦のG2ジョッキークラブCで印象的な末脚を見せたシークレットウェポン(セン6)には、わずかだが食指が動く。
また、仏国からの遠征馬で、今年7月にドイツでG1バイエルンズヒトレネン(芝2000m)を制しているエリプティク(牡5)も、ノーマークにするのは危険な馬である。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。
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