2004年12月14日(火) 11:53
12月11日、ハリウッドパークで行われたダート6fの2歳メイドンで、今年2月の「ファシグティプトン・コールダーセール」で最高価格で購買されたフサイチサムライがデビュー。見事に初戦を白星で飾り、一躍ケンタッキーダービー戦線で大きな注目を浴びる存在となった。
1回目の公開調教で抜群の動きを見せ、1F=10秒2の好時計をマーク。卓越した身体能力に加え、見るからに垢抜けた馬体を持った逸材を前に、シェイク・モハメド、ジョン・マグナー、サティッシュ・サナンといった世界の名だたる馬主たちの目の色が変わり、壮絶な争奪戦を展開したのが、今から9ヶ月半ほど前のことである。
結局、450万ドルという2歳セール史上の歴代最高価格で、父フサイチペガサスを所有していた関口房朗氏が落札に成功にしたこの若駒は、フサイチサムライという競走名を冠され、父と同じカリフォルニアのニール・ドライスデール師の管理下におかれ、調教を積まれてきた。
慎重派のドライスデール師らしく、仕上げのピッチはきわめてゆっくりとしたものだった。セールの時点で仕上がっていたこの馬を、馬体・精神の両面において一旦弛緩させ、緊張をほぐした上でたっぷりと成長の時間を与えたのだ。師によれば、心肺機能の発達に比べて肉体面での成長が遅れていたようで、車で言えばエンジンは高性能なのだか、シャシーや足回りが強固さでなく、きつい調教を施すと体がついていけない状態が続いていたそうである。特に、後駆の肉付きが足りないのが師には不満だったようで、そのあたりがデビューが年末にズレ込んだ理由であったようだ。
12月11日は、奇しくも父フサイチペガサスがデビューを飾った日と全く同じ。父はその初戦、レースに対する戸惑いを見せ鼻差の2着と敗れていたのだが、息子は無事に白星で通過することが出来た。
「自分がこれまでに騎乗した最高の2歳馬」と、既に最大限の賛辞を贈っているのが、手綱をとったヴィクター・エスピノーザ騎手だ。今後も引き続き“主戦”として乗り続けたいという“下心”のある男の発言だけに、いくらか割り引いて考える必要はあるだろうが、相当の手応えを感じ取ったことは間違いなさそうだ。ちなみにラスヴェガスのカジノは、来年のケンタッキーダービーの前売りで、フサイチサムライに20対1のオッズを掲げて賭けを受け付け始めている。
レース後も馬は元気と伝えられているが、次走がどこになるかはまだ未定。ドライスデール師のことだから、相手の軽そうなアロウワンスを見つけて使うことになるはずだ。2005年のケンタッキーダービーを目指す北米の牡馬戦線には、ここまで核となる馬が出現していなかっただけに、フサイチサムライの今後にはマスコミやファンの大きな関心と期待が寄せられることになるだろう。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。