冬季繁殖馬セール

2017年02月02日(木) 19:00 23


受胎馬のマイナス分を未供用馬がカバーした今年のセール

 昨日の2月1日、北海道市場にて、(株)ジェイエス主催の「冬季繁殖馬セール」が開催された。開場は正午、セリ開始は午後1時半というスケジュールで行なわれ、あいにくの雪に見舞われた中、38頭(受胎馬11頭、空胎馬と未供用馬27頭)が上場され、そのうち25頭(受胎馬5頭、空胎馬20頭)が落札された。
冬季繁殖馬セール会場風景

冬季繁殖馬セール会場風景

 売却率は65.79%(受胎馬45.45%、空胎馬74.07%)、売り上げ総額は1億6687万800円(税込)、落札馬の平均価格は667万4832円である。

 今回は、受胎馬の売れ行きが伸び悩み、価格も昨年と比較するとかなり低めに推移した。

 受胎馬の最高価格馬は2番クイーンカアフマヌ(13歳鹿毛、父キングズベスト、母アルアメント、母の父サドラーズウェルズ、カネヒキリを受胎、最終種付け日5月11日)の669万6000円(税込)。本馬は中央1戦のみの成績ながら、産駒にカナロア(4勝)、リリコイパイ(2勝)などがいる繁殖牝馬で、母のアルアメントはフランスのGIIIを制している。販売申込者は金子真人ホールディングス(株)、落札者は(有)村上欽哉牧場。

669万6000円(税込)で落札された2番クイーンカアフマヌ

669万6000円(税込)で落札された2番クイーンカアフマヌ

 上場順は例年通りに受胎馬、そして空胎馬、最後に未供用馬と続く。受胎馬と空胎馬、未供用馬の間は十分に時間が空けられており、これは伝染病に配慮するためである。

 半分以上が売れ残ってしまった11頭の受胎馬に続き、空胎馬が13頭上場された。番号はここから50番台になる。

 空胎馬の2番目、51番はイントゥザストームで、昨年度クロフネを種付けし不受胎になった父ディープインパクトの8歳鹿毛。本馬自身も、中央3勝2着1回3着5回と堅実な成績を残しており、3788万9000円を稼いでいる。セリは190万円から始まり、1458万円(税込)まで価格が急上昇した。

1458万円(税込)で落札された51番イントゥザストーム

1458万円(税込)で落札された51番イントゥザストーム

 この馬も販売申込者は金子真人ホールディングス(株)、落札者は(有)ホースバンクであった。空胎馬13頭のうち、落札されたのは7頭、主取りが6頭。ここでようやく売却率が半分を超えた。なお、空胎馬の中には、ドリームパスポート(神戸新聞杯、きさらぎ賞など3勝、JC2着、皐月賞2着、菊花賞2着)を生んだグレースランド(19歳栗毛)も上場され、464万4000円(税込)で西村健氏が落札した。販売申込者は(有)社台コーポレーション。周知の通り、半兄にステイゴールド、半妹にレクレドールのいる名血馬で、19歳ながら空胎馬の中では2番目の価格となった。

 ここまではやや低調ムードに支配されていたが、未供用馬の部になってから一気に市場内の雰囲気が変わった。未供用馬は現役引退間もない若馬ばかりで、しかも、名のあるオーナーの所有馬が並んでいることもあり、多くの購買者がここを目標に市場に足を運んだものと思われる。

 未供用馬は14頭が上場され、1頭を除いた他の13頭が落札された。しかも税込2000万円超の高額馬が3頭出て、ここにきて俄然活況を呈するようになった。

 結果的には、当市場における高額落札馬ベストスリーがこの未供用馬3頭であった。最高価格馬は64番パラダイスリッジ(5歳鹿毛、父ディープインパクト、母クロウキャニオン、母の父フレンチデピュティ)で、カミノタサハラ(弥生賞など3勝)、ボレアス(レパードSなど3勝)、マウントシャスタ(4勝)などの全妹である。価格は2376万円(税込)。やはり金子真人ホールディングス(株)が販売申込者で落札者は(有)ケイアイファーム。

2376万円(税込)で落札された64番パラダイスリッジ

2376万円(税込)で落札された64番パラダイスリッジ
64番パラダイスリッジ落札の瞬間

64番パラダイスリッジ落札の瞬間

 次点は72番アドマイヤビジン(6歳芦毛、父クロフネ、母スマイルビジン、母の父ゴールドヘイロー)の2160万円(税込)。販売申込者は近藤利一氏、落札者はシンボリ牧場(有)。

2160万円(税込)で落札された72番アドマイヤビジン

2160万円(税込)で落札された72番アドマイヤビジン

 そして73番アドマイヤサブリナ(7歳芦毛、父シンボリクリスエス、母ツィンクルヴェール、母の父サンデーサイレンス)の2106万円(税込)と続いた。

2106万円(税込)で落札された73番アドマイヤサブリナ

2106万円(税込)で落札された73番アドマイヤサブリナ

 受胎馬のマイナス分を未供用馬がカバーした形である。しかも、大手オーナーから売り出された名血の上場馬に人気が集中したことで、結果的には売却率こそ昨年を下回ったものの、総額は逆に4456万800円の増となった。

 この結果について主催者を代表し(株)ジェイエスの藤原悟郎氏は「受胎馬が意外に振るいませんでしたが、著名なオーナーから良い血統の未供用馬を出して頂き、昨年を上回る売り上げを残せました。良い馬ほど注目度も高く価格も上昇する結果になったと思います。悪天候にもかかわらず、購買者と販売者の方々にご協力頂いたことを改めて感謝申し上げます」と結んだ。

 昨年に続き、上場馬が38頭にとどまったことは今後の課題だが、名血の未供用馬は相変わらず高い注目度を示し、価格も高くなる傾向がより鮮明になった市場と言える。とりわけ、ディープインパクトを父に持つ上場馬は4頭出てきたが、いずれも高い価格で落札されたことが印象に残った。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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