生産牧場賞、大幅削減

2005年01月11日(火) 18:03

 昨年から今年にかけて、私たち生産者にとって大きな関心事となっているのが、中央競馬における「生産牧場賞」の減額である。

 まず、その金額を以下に紹介しておこう。括弧内はいずれも前年の数字である。

 ジャパンC、有馬記念、宝塚記念、東京優駿(ダービー)、天皇賞(春・秋)以上のG1競走。1着100万円(500万円)、2着40万円(200万円)、3着25万円(130万円)、4着15万円(75万円)、5着10万円(50万円)。その他のG1も、今年よりこの金額に横並びとされた。昨年まではちなみに1着300万円、2着120万円、3着75万円、4着45万円、5着30万円という数字だった。

 G2は、1着80万円(240万円)、2着32万円(96万円)、3着20万円(60万円)、4着12万円(36万円)、5着8万円(24万円)。こちらもG2とG3(その他の重賞)とが同一金額になった。参考までに昨年はG3の場合、交付金額は1着190万円、2着76万円、3着48万円、4着29万円、5着19万円である。

 無味乾燥な数字の列記ばかりで申し訳ないが、もう少しおつき合い頂きたい。今度は特別競走。OP特別とその他の特別競走とに二分されていた金額が、やはりこれも今年から同額にされ、1着60万円(昨年はOP特別105万円、その他の特別64万円。以下同様に記す)2着24万円(OP・42万円、その他26万円)、3着15万円(OP・26万円、その他16万円)、4着9万円(OP・16万円、その他10万円)、5着6万円(OP・11万円、その他6万円)ということになった。

 そして最後に一般競走。こちらも今年から1勝以上の競走と、新馬・未勝利とが同額になり、次のような数字に変更されている。1着32万円(昨年、1勝以上43万円、新馬・未勝利27万円、以下同様に列記)、2着13万円(1勝以上17万円、新馬・未勝利11万円)、3着8万円(1勝以上11万円、新馬・未勝利7万円)

 おおむね「削減」されたと言えるわけだが、その削減幅の大きいのはOP特別から重賞以上の、ハイレベルなクラスにおいて顕著であるということ。一般競走での変更は、1勝以上が減額され、新馬・未勝利は、むしろ「微増」という回答になっている。これは、やはり生産者に配慮した結果である。圧倒的に数の多い一般競走のうち、たぶん最も多数を占めるであろう新馬戦、未勝利戦の支給金額を僅かながら増額したのは、とりわけ日高の中小牧場への影響を最大限考慮したと解釈すべきだろう。なぜならば、現実問題としてこれらの多くの牧場にとっては、OP特別以上のクラスに生産馬が出走し、尚且つ入着もしくは優勝する場面など、ほとんどないからである。

 つまり「上に薄く、下に厚く」という支給基準となったわけで、それは競争原理に反するとの指摘もあろうが、仮に削減割合が「上にやさしく、下に厳しく」なった場合には、それこそ中小の(というか、下級条件馬を主として送り出している)生産者への影響は甚だ大きなものになっただろうという気がする。

 ところで、生産牧場賞とともに、私たちに交付されているのが「繁殖牝馬所有者賞」である。こちらは、削減の対象とはならず、交付金額は前年と同様の水準が守られた。

 この繁殖牝馬所有者賞は、JRAに馬主登録をしている人物が、繁殖牝馬を所有し、どこかの生産牧場に預けている場合に、その牝馬から生まれた産駒が競走成績を残せば規定の金額が繁殖牝馬の所有者に交付されることになる。(金額は、生産牧場賞の昨年度の交付基準をご参照頂きたい。)

 今回の改正?で、最も影響を受けるのは、大手馬主などからの預託牝馬を主として繋養していた生産牧場ということになろうか。仮にG1級の生産馬が生まれても、繁殖牝馬が自己所有ではないので、前述のようにダービーを勝っても100万円である。いまさら過去の話をしてもしょうがないとはいえ、例えば平成10年あたりの交付基準一覧を見ると、まさに隔世の感がある。当時は、混合戦のG1(ジャパンC、有馬記念など)に勝つと、生産牧場賞が800万円、繁殖牝馬所有者賞が800万円、さらにその生産馬が父内国産の場合200万円、市場取引馬ならば210万円、などとなっていたのだ。テイエムオペラオーが1頭で1億円からの生産者賞(これらをすべて含めての総称)を稼いだというエピソードは良く知られたところだが、もうそんな時代に戻れるとはとても思えない。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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