2017年04月13日(木) 12:00
◆今年の桜花賞で一番再考しなければならなかったのは、馬場だった
伏兵は物陰からこちらを狙っている。その伏兵をみつけるかどうかなのだが、ハイレベルの2強対決の評判にすっかり気を奪われてしまっていた。考えすぎる人に「棚ぼた」は落ちてこないと言うが、あまりにも、考えすぎずにきてしまったのだ。「不慮にそなえるということは古(いにしえ)の善い教えだ」と言うではないか。
だが、その辺の塩梅がむずかしい。孔子だって、「過ぎたるはなお及ばざるがごとし。果断に乏しければ、時機を逸することが多い。再考ぐらいでちょうどよい」と教えている。この再考ぐらいはしておくべきだった。だが、17頭の中からレーヌミノルに出会うのは、ある種の偶然がともなわないと困難であった。
今年の桜花賞で一番再考しなければならなかったのは、馬場だった。ソウルスターリングの戦い方は、どう見ても過不足なかったように思えた。直線に向いていざこれからと多くが確信しようとしたとき、どうも走りづらそうに見えた。大きく、柔らかいフットワークにならないのだ。こんなシーンは、とても考えられなかったが、そこはキャリアの浅い3歳牝馬、考えられなくもないことではあった。
このキャリアで言えば、勝ったレーヌミノルは7戦目、中に阪神ジュベナイルフィリーズの3着があり、同じコースなら再考の余地はあった。小倉デビューでその2歳ステークスを勝ったとなればスピード馬と決めつけたくなるが、その後東京で京王杯2歳ステークスを走っていたり、クイーンカップで逃げてみたり、阪神のフィリーズレビューで差すレースをしたりと、そのいずれでも好走していたのだから、この経験は大きかった。
本田調教師は、おっとりとした気性を考慮して桜花賞までゆっくり戦わせ、キャリアを積ませていた。根性もついて道悪になってもしっかり走るという確信があり、10日前に初めて乗ったという池添騎手は、本番ではただ人馬の呼吸を合わせることだけに集中していたと述べている。一見無欲の勝利にも見えたのだが、この馬なりのキャリアを積ませて狙いを定めていたことには変りはない。考えすぎずとも再考ぐらいはすべきと、桜花賞は教えていた。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
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