2005年02月23日(水) 11:56
競馬の感動をどう伝えようかと、時折思い起こしています。フェブラリーSでメイショウボーラーがダート3戦3勝で優勝したそのシーンこそ、感動そのもので、そこに言葉は必要ないかもしれません。レースそのもの、馬そのものから伝わるものの中にこそ感動があり、それが競馬なのだとの思いが強い一方で、しかしそれでは物足りないという思いもあります。どうにか言葉にして、そのとき発したフレーズが多くの人の記憶の中に残ってくれないかとの思い、人間なら誰にだってこうした欲があるでしょう。
それをどう抑えて、たんたんと事実を伝えることに徹し切るか、実況放送の真骨頂はそこにあると学んできました。競馬をスポーツと考えれば考えるほど、伝える側の心得の中にこの精神は生かされねばならないでしょう。そうあってほしいといつも強く願っている一人です。
ところで、フェブラリーS優勝後のインタビューに感動したという競馬ファンの話を聞きました。
福永祐一騎手のこの一戦にかけた思いが熱く伝わってきた、そのことに感動を覚えたというのです。確かに、彼の誇る表情はたんたんと見えていましたが、言葉にはその思いが込められていました。いつもより多弁な勝利ジョッキーインタビュー、おそらく、次から次へと言葉が溢れてきたのでしょう。
そう話してくれた方はもう30年は競馬を見に来ています。とても感動を受けたようでして、その話に圧倒されました。
当事者が誇ってくれることがどれほど競馬にとって大切かを改めて確認させられました。
あのシーンを見られたことで、今年のフェブラリーSはずっと記憶されることになりました。競馬の中の感動とはとってつけた言葉では伝えられないと、そのことを心していかなければならないのでしょう。時折、良い言葉が聞かれる競馬であってほしいです。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。