2017年08月14日(月) 12:01 45
▲追い込みのイメージが強い武士沢騎手に「逃げ戦法はあまり好きではないのでしょうか?」との読者質問が
前回、思い出の馬たちのエピソードを語った武士沢騎手。そのラインナップは、癖の強い馬たちが多い。「普通なら競馬のことだけ考えればいいけど…」と、癖馬に乗る上で人知れず心掛けていることを明かします。その流れで、武士沢騎手は逃げることが少ないのでは? という話に。追い込みの印象が強い武士沢騎手から、思いがけないホンネが飛びだします。(取材:赤見千尋)
(前回のつづき)
赤見 思い出の馬やレースについてお話をうかがってきましたが、改めて個性の強い馬が多いですね。
武士沢 いいんじゃないんですか。そういう馬って紙一重だからね。その個性が走ることに生かされる場合もあるし、僕もそうなるように意識して乗っているから。実際、気性の激しさが走るほうに出てくれている馬もいるし、そういう馬が回ってくるのも縁なのかなって。
赤見 なんかこう、一癖ある馬は武士沢騎手に…みたいな流れがありますよね。
武士沢 障害以外なら、どんな馬でも乗りますよ!
赤見 さすがです(笑)。では、ここからは、騎乗論につながる質問を通して、武士沢騎手の“個性”に迫っていきたいと思います。まずは、「苦労した馬はやはり覚えているものですか??どういった苦労が多いのでしょうか?(Noriwoさん)」。
武士沢 苦労した馬……いっぱいいるからなぁ。ほぼ苦労してると言っていいくらい(笑)。普通は競馬のことだけ考えればいいけど、僕の場合、「競馬までどうやって向かおうか…」っていうところから始まる馬もたくさんいるからね。
赤見 それは返し馬とかゲートとか?
武士沢 そうそう。上手く返し馬をしてあげなくちゃ、ゲートでも悪さをしないように気を付けなくちゃって。最悪の場合、ゲート再試験になってしまうパターンの馬とかたくさんいるから(笑)。そういう課題をいくつも消化しながら競馬に向かわなくちゃいけない。競馬は二の次といったら言い過ぎだけど、無事にゲートを切るまでが試練になっちゃってる馬も多いから。
赤見 展開とかポジション取りとか、それ以前の問題ということですね。
▲無事にゲートを切るまでが試練…「展開とかポジション取りとか、それ以前の問題ということですね」
武士沢 そうですね。競馬のことだけを考えればいい馬はすごく楽だけど、そうはいかない馬が多いから。でもね、ある意味、ずっと勉強させてもらってる。「油断するなよ」っていうことなのかもしれないと思ったり。ただやっぱり、競馬に行くまでにいろいろ考えさせられるっていうのは、正直、けっこう負担です(苦笑)。・・・
東奈緒美・赤見千尋
東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。
赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。