週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2005年03月22日(火) 15:03

 いよいよ今週の土曜日、ドバイのナドアルシバ競馬場で、創設以来10回目の開催を迎えるドバイワールドCが行われる。

 追い込みの利く芝コースと異なり、ナドアルシバのダートは「先手必勝」。先に行かないことには勝負にならない。過去9回の勝ち馬を見ると、道中の位置取りはすべからく前から数えて3番手以内。ナドアルシバの直線は600mとたっぷり距離があるにも関わらず、最終コーナーを回る頃には仕掛けに入り、残り400mの地点は過去9頭の優勝馬すべてが既に先頭に踊り出ていた。

 昨年の勝ち馬プレザントリーパーフェクトなども、本国アメリカの小回りトラックで追い込みを得意としていた馬だったが、ドバイでは定石通りの早仕掛けで優勝をものにしている。

 そういう意味では、日本から単騎挑戦するアジュディミツオーは、先行力があるという点でまずは優勝争いの俎上に乗ってくる1頭であろう。

 他のメンバーを見渡すと、行こうと思えば行ける馬は多いものの、ハナにこだわるタイプは居らず、本番でペースを作るのはおそらくアジュディミツオーになるものと思われる。

 前走逃げ切っているのが、前哨戦のマクトゥームチャレンジ第3戦を制したチキティンだ。だが、展開はスローで、勝ちタイムも2分4秒台と遅く、アジュディミツオーの行き脚には付いてこれないものと思う。

 強力4頭出しのアメリカ勢の中で最も先に行きそうなのは、ロージズインメイだろう。ただし、前走のドンHを見ても、セイントリアムが行きたがる素振りを見せた時には控えており、無理な先行争いを仕掛ける馬ではない。コングラッツとランディーズライアビリティーは、好位から中団付けが定番。昨年8月のサンディエゴHで、後方2番手からの追い込みでプレザントリーパーフェクトに土をつけたチョクトーネイションも、末を活かす競馬をするはずである。

 現地からの情報によると、アジュディミツオーは順調に稽古を消化しているようで、体調面での不安はなさそうだ。あとは、本番でナドアルシバのダートをどうハンドリングするかが、残された大きなポイントとなるはずだ。

 昨年、サイレントディールがスタートで躓き、アドマイヤドンも鞍上の安藤騎手が「滑るような感じがした」とコメントしたように、ナドアルシバの砂は走り慣れない馬にとって、時に大きな障壁となる。調教では上手にこなしているように見えても、全力疾走の本番では何が起こるかわからないのだ。それだけに、予定をしていた前哨戦を使えなかったのはアジュディミツオーにとって返す返すも残念だ。

 過去のドバイワールドCにおける日本馬の成績を見ると、01年のトゥザヴィクトリーを除けば、6着というのが1つの壁となっている。アジュディミツオーにとっては、まずはこの壁を破ることが目標となろう。うまくゲートを出て、スムーズに先手がとれれば、目標達成は充分に可能と見ている。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

新着コラム

コラムを探す