2017年10月12日(木) 18:01 67
▲昨年のドバイターフ以来の勝利を挙げたリアルスティール (撮影:下野雄規)
シルバーステートで臨む予定だった毎日王冠。あの日はメインレースに乗っていなかったこともあり、スタート前から「もし出ていたらどんな競馬をしていただろう」などといろいろなことに思いを巡らせながら、京都競馬場でじっくりとレースを観ていた。
確固たる逃げ馬は不在。大半のジョッキーは、戦前からスローペースになることを予測していたはずで、これは1枠1番を引いた1番人気ソウルスターリングに有利な展開になりそうだな…と、スタートするまでは思っていた。
が、いざスタートしてみたら、トップスタートを切ったウインブライト(10着)につられるように、ダイワキャグニー(4着)、マッチレスヒーロー(12着)、ヤングマンパワー(5着)ら先行勢が、思いのほか出していく展開に。ソウルスターリングもその1頭で、スタート自体はそれほど速くなかったにもかかわらず、クリストフ自らハナを取りにいったように見えた。
おそらく、クリストフが相手と見ていたのは、外のリアルスティールやサトノアラジン。先行勢の後ろに入り、スローの内に閉じ込められて踏み遅れるケースを避けるための選択だったのではないかと思われる。
結果的に、1000m通過60秒フラットのスローペースになったが、やや立ち遅れ気味のスタートからハナを取ったぶん、実際のペースほど楽逃げではなかったはず。最後に思いのほか伸び切れなかったのは、このあたりの影響もあるだろうし、最後は典型的な瞬発力勝負で、決して前の馬ばかりに楽な流れとはいえなかった。それに、ソウルスターリングの武器は、持久力のある末脚。33秒を切る上がり勝負は分が悪かったといえるかもしれない。
勝ったリアルスティールは、縦長の外目という絶好のポジショニング。おそらく狙ってあの位置を取りにいったというよりは、馬のリズムを重視しながら最高の形を作り上げていった競馬だったように思う。最後もギリギリまで脚をタメ、ベストのタイミングを計りながら満を持しての追い出し。自分の目には、スタートからゴールまで「これで負けたらどうしようもない」という完璧なレースに映った。・・・
福永祐一
1976年12月9日、滋賀県生まれ。1996年に北橋修二厩舎からデビュー。初日に2連勝を飾り、JRA賞最多勝利新人騎手に輝く。1999年、プリモディーネの桜花賞でGI初勝利。2005年、シーザリオで日米オークス優勝。2013年、JRA賞最多勝利騎手、最多賞金獲得騎手、初代MVJを獲得。2014年のドバイDFをジャスタウェイで優勝。