2017年10月16日(月) 18:01
※当コラムの内容は、取材時点のものとなります。
▲コーフィールドCからメルボルンCを目指すアドマイヤデウスと、調教を担当した森信也さん(提供:森信也さん)
重賞2勝のアドマイヤデウスがオーストラリアに移籍し、メルボルンCを目指している。移籍に際し、出入国検疫の間、調教を任されたのは地方・荒尾競馬(2011年廃止)出身でオーストラリア在住のトラックライダー(調教助手)森信也さんだった。九州の小さな地方競馬の厩務員だった彼が、なぜオーストラリアの国民的レースの有力馬を任されることになったのか。また、「調教の仕方からして違う」というオーストラリアと日本の違いなどを聞いてきた。(取材・文:大恵陽子)
アドマイヤデウスの移籍が発表されたのは今年8月。2015年に日経新春杯と日経賞を勝利し、今年の天皇賞・春ではキタサンブラックの4着と、芝の中〜長距離で実績を残してきた。かねてよりメルボルンCに出走の意向を示していたが、オーストラリア移籍後もそれは変わらなかった。
▲2015年の日経賞優勝時のアドマイヤデウス、前走の日経新春杯に続き重賞を連勝をした(撮影:下野雄規)
メルボルンC当日、ビクトリア州は「メルボルンカップデー」という祝日に指定されている。そんな一大イベントに有力馬の1頭として出走するアドマイヤデウス。日本からの出国検疫2週間とオーストラリアでの入国検疫2週間、同馬の調教を任されたのがオーストラリアでトラックライダー(調教助手)として活動する森信也さんだった。
「日本とオーストラリアの両方で調教に乗れる人を探している、とオーナー側から連絡がありました」
日本語でも英語でもコミュニケーションをとることができ、両国の競馬に精通している森さんは適任だったのだろう。
森さんの競馬人としてのスタートは鹿児島県の高校を卒業してからまだ日が浅い頃だった。競馬ファンの彼は、有明海が臨める熊本県の荒尾競馬場で働くことになった。ところが、知人からの紹介で訪ねた厩舎は社会に出たばかりの18歳には衝撃的な光景だった。
「調教師がかなりの強面だったんです。同年代の厩務員の髪の色は赤や紫。打ち解けていくと、調教師は優しいし厩務員同士の団結力も強くてよく遊んだんですが、初めはビックリしましたね(苦笑)」
見た目こそヤンチャだったが、荒尾リーディングにも何度か輝いたことのある厩舎だった。
「細かく教えてもらうというよりは、自分で考えて行動する厩舎でした。エサの量と調教のバランスなど、試行錯誤の繰り返しでしたが、その分鍛えられましたね」
JRAにも遠征するなど、着実に結果を残していった中で転機が訪れたのは、担当していた活躍馬が引退した頃。オーストラリアで開業する日本人の繁実剛調教師がスタッフを探していると聞き、荒尾の厩舎を3ヶ月休ませてもらいオーストラリアに渡った。
当時はJRA競馬学校の厩務員過程を卒業後、すぐにトレセンに就職できない待機生がそれなりの人数がいて、繁実厩舎でも多く働いていたという。調教師もスタッフもほとんどが日本人なのでコミュニケーションには困らなかった。一旦帰国後、荒尾競馬の厩舎を退職し、再びオーストラリアに飛んだ。・・・
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