2017年11月01日(水) 18:00
4月18日に開幕した道営ホッカイドウ競馬も、後残すところ今週と来週の2週間になり、いよいよ大詰めを迎えている。
昨日(10月31日)は恒例の北海道2歳優駿が行なわれ、出走頭数は9頭にとどまったものの、中央から武豊騎手や戸崎圭太騎手、田辺裕信騎手などが遠征してくるとあって、久々に門別競馬場は多くのファンで混雑していた。
10月最終日ともなれば、例年門別競馬場は日が落ちると寒さが身にしみる気候である。この日も、気温は6〜7度程度まで下がったものの、幸いにも風がなく、この時期としては穏やかな天候に恵まれた。とはいえ、秋の深まりとともに、門別の馬場は回復が遅くなり、晴れていても水分をたっぷり含んだ重馬場である。
第9レースが終わり、メインの北海道2歳優駿に出走する各馬がパドックに姿を現す頃には、ふだんよりもずっと多くの人々が柵を取り囲むようにして集まっていた。そして、各騎手が控室にやってくるのを待ち受ける「出待ち」の人々も鉄柵の前に群がっている。これは明らかに「武豊効果」と言って良い。
人気はやはり武豊騎手騎乗の中央馬ドンフォルティス(1.9倍)から売れていた。続く2番人気は道営のハッピーグリン(服部茂史騎手、5.1倍)、3番人気は中央のフィールシュパース(田辺裕信騎手、6.2倍)という順である。こと2歳重賞に限っては、ホッカイドウ競馬所属馬のレベルが高いので、古馬重賞のような中央からの遠征馬に人気が集中するようなことはない。このレースは地元勢5頭に対し中央馬4頭という構成だが、武豊騎手ドンフォルティスが抜けた1番人気の他は、かなり拮抗している。
周知のように武豊騎手は2日前の東京で、雨の中行なわれた天皇賞をキタサンブラックで制したばかり。ここ門別でも、武豊騎手を一目見ようと集まったファンの視線は、彼の一挙手一投足に注がれる。
午後7時45分。出走各馬がパドックを後に、本馬場へ入り、それぞれ返し馬に移る。他の8頭はすべて1コーナー方向に曲がり、向こう正面をゆっくりと右回りで進んで行く。だが、武豊騎手だけはドンフォルティスをホームストレッチ方向に進め、多くのファンが見守る中、4コーナーに向かって一歩ずつ確かめるように行く。盛んに声援が飛ぶ。やはりここでも主役はこの人だと感じさせられる。
午後8時ちょうど。ゴール地点から200m下がった位置に引き出されたゲートに各馬が入り、スタートが切られた。まず飛び出したのはディーエスソアラー(宮崎光行騎手)、それにサザンヴィグラス(吉原寛人騎手)、ヤマノファイト(阿部龍騎手)が続く。ドンフォルティスはスタート直後に挟まれる不利があり、後方から追走する展開となった。
だが、各馬一団のまま3コーナーに差し掛かったあたりから、地力に勝る武豊騎手ドンフォルティスが、大外をどんどん加速しながらまくって行く。他の馬とはまったく手ごたえが違っており、直線に入るとすぐに先頭に立ち、内で粘るサザンヴィグラスを交わすと、そのまま余裕を持ってゴール板を駆け抜けた。2着には外から必死に追いすがったフィールシュパースが1馬身2分の1差で入り、3着にサザンヴィグラス(1馬身2分の1差)いう着順であった。
レース後の勝利騎手インタビューで武豊騎手は「距離が初めてだったので前半無理をせずに行きました。利口な馬なので良い感じで走ってくれて、手ごたえが良かったので、押し切ってくれるだろうと思い、早めから仕掛けました。門別は好きな競馬場ですね」とウイナーズサークルを取り囲んだファンを前ににこやかに話していた。
当代きっての人気騎手が、1番人気の馬に騎乗して順当に勝利を収めたことになるが、改めて武豊騎手の圧倒的な存在感と人気の高さを見せつけられた印象だ。
このレースを制したドンフォルティスは父ヘニーヒューズ、母グロッタアズーラ、母の父フジキセキという血統の牡2歳栗毛馬。栗東・牧浦充徳厩舎の管理馬で馬主は山田貢一氏。生産は日高町・アイズスタッド。これで通算成績は4戦3勝となり、嬉しい重賞初制覇となった。因みに牧浦調教師も同レースは初勝利で、鞍上の武豊騎手は、このレース4度目の優勝となる。
この日は、武豊効果から、門別競馬場は久々に入場人員が1071人に達し、売り上げも4億9982万円を記録した。昨年の929人、4億2913万円をいずれも上回る好成績であった。
ちなみに今年のホッカイドウ競馬は、好調なネット発売に支えられ、昨日の北海道2歳優駿の日を加算すると、これまでに75日間の開催で229億円を売り上げており、すでに昨年の203億5501万円を大きく上回っている。今日を含め残り5日間でどれだけ上乗せできるかがひじょうに注目されるところだ。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。
プロフィール
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