2017年11月08日(水) 18:00
11月4日(土)、浦河のBTC覆馬場にて、北海道高等学校馬術連盟(吉田勝己会長)主催による馬術競技大会が開催された。いわゆる「新人戦」として、各高校の1年生、2年生が来年度のインターハイを視野に入れて臨む大会であり、時節柄今年度最後の競技大会となる。
道内各地より6校、計18人の選手が出場した。1校につき3人ずつの計算だが、部員数が少なかったり、修学旅行などの行事と重なる高校もあり、各校2人〜4人の変則的な出場人数であった。
現在、北海道内で馬術部のある高校は決して多くない。札幌に2校(龍谷高校、光星高校)、日高管内に3校(浦河、静内、静内農業)、そして帯広農業の計6校である。
言うまでもなく、高校で馬術部を持つというのはかなりハードルが高い。他の運動部と異なり、まず馬と練習場所、それに指導者が要る。馬はある程度訓練された競技馬でなければならず、元競走馬(サラブレッド)を譲り受け、障害飛越や馬場馬術を行なえるまでに再調教する必要がある。馬を調達できたとしても、飼養管理する施設(厩舎やサンシャインパドック、繋ぎ場等々)や、肝心の練習場所も確保しなければならない。当たり前の話だが、他のスポーツと同じ空間での練習は不可能で、専用の角馬場、できれば屋根付きの施設が欲しいところだ。
馬と施設が仮に用意できたとしても、部活を指導する馬術経験豊かな教職員の確保がまたかなり難しい。公立高校レベルでは到底これらを自前で揃えるのは無理なので、例えば、浦河高校の場合は、JRA日高育成牧場やBTCの施設、馬を借用し、部活動を行なっている。そうしたサポートがなければとても活動を維持できないのが現状である。
さて、今回の新人戦に出場した18人の内訳は以下の通り。龍谷高校4人、光星高校3人、静内高校3人、静内農業4人、浦河高校2人、帯広農業2人。浦河と帯広農業が2人ずつと少なかったためか、団体戦はなく、すべて個人戦で行なわれた。
1回戦は、18人が馬6頭に3人ずつ騎乗し、決められたコース経路に従って、障害を飛越していく。6頭の中には、2011年の新潟2歳ステークスを勝ったモンストールもいて、高校生を乗せ元気に障害を飛ぶ姿も見られた。
なお、今回の大会はすべてJRAの貸与馬で争われた。公平を期すために、6頭の騎乗馬ごとにブロック分けされ、各馬の騎乗者3人の中から1人ずつ勝者を選ぶ。覆馬場一杯に設置された9つの障害を飛越し、タイムで争われる。もちろん、障害の横木を落下させると減点される。また、飛越を拒否されたりすると、タイムロスが生じ、著しく不利な展開となる。落馬はその時点で失権である。減点ゼロの場合は、より速いタイムでコースを走ってきた選手が勝ちである。
前日、会場入りした18人は下見を兼ねての練習を行い、当日に備えてきた。普段乗り慣れていない初めての馬とのコンビはなかなか難しいようで、その点、地元の浦河高校の2人はいつも練習している場所と馬での競技であり、その分だけやや「地の利」があったかもしれない。
1回戦で6人に絞られた後は、同じ要領で、別の馬に代えて競技が続けられる。2回戦でさらに3人が勝ち上がった。決勝では1頭の馬にこの3人が交代で騎乗し、優勝をかけて競技が行われた。その結果、1位は中神美紗さん(浦河高校)、2位は宮坂彰穂さん(光星高校)、3位は石川傑君(浦河高校)という順位となった。
ところで、地元の浦河高校の2人のうち、中神さんは、生産牧場の娘で、幼い頃から馬に親しんできた環境だが、3位の石川傑君は「変わり種」で、何と出身は富山県という。彼の兄は現在、ホッカイドウ競馬の騎手として活躍している石川倭さんで、はるばる馬術部に入部するために富山県からやってきて浦河高校に入学したのである。聞くところによると、富山県では馬術部のある高校がないとのことで、意を決して北海道に渡ってきたようなのだ。
とはいえ、現在、石川君を含め浦河高校馬術部員はわずか2人。馬産地にありながら、このままでは団体戦に必要な3人の選手を確保することも難しく、前途多難な状況だ。何とか立て直しができると良いのだが…。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。
プロフィール
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