JRA育成馬展示会

2005年04月12日(火) 20:02

 今週初めの4月11日(月)、浦河町西舎にあるJRA日高育成牧場にて「JRA育成馬展示会」が開催された。

 ようやく放牧地の雪もなくなり、日毎に春めいてきているとはいえ、まだ4月前半の日高は気温が低い。この日は幸い晴天に恵まれたものの、西寄りの風がやや強く、気温9度とはいいながら体感温度はそれよりも寒く感じられるコンディション。しかし、多忙な作業の合間を縫って、近隣の生産者を始め、日高各地から昨年の市場にて購買されたJRA育成馬の生産者たちが続々と集まり、すっかり見違えるほど立派に成長した生産馬を見学した。

 展示開始は午前10時。前々回の当欄でも触れた通り、日高育成牧場には全80頭中56頭のJRA育成馬が引き取られ、昨年夏より今日まで馴致、調教を重ねてきた。この日はいわばその「集大成」ともいうべき“お披露目”の日でもある。

 まず展示会は4班に分かれての比較展示から開始された。1つの班は12頭〜16頭で構成され、牡2班、牝2班に分けられている。当然のことだが、牡と牝は完全に区別され、隣り合うことのないように配慮されている。

 比較展示は1班当たり約15分程度。この間に、生産者はもちろん、購買希望者(調教師なども含め)が1頭ずつ丹念に馬体をチェックして歩く。改めて感じたことが二つある。一つは去る3月23日と24日に56頭を見た時の印象と、今回の展示会とでは、やや雰囲気が変わっているということ。わずか20日間とはいえ、この時期の北海道は冬から春にかけての季節の変わり目であり、暖かさとともに馬も大きく変わってくる時期でもある。北海道の寒さが1歳から2歳春までの成長にはそれなりのハンディキャップであることは間違いないのだが、温暖の地である宮崎で育成された24頭との間に果たしてどれくらいの差が生じているものか、が気になるところだ。

 そしてもう一つは、そのことに関連するのだろうが、北海道で冬を過ごした56頭の中には、まだ冬毛の抜けていない馬もいたり、調教進度が遅れて、本番の4月25日に向けて仕上げることが不可能となった育成馬が日高だけで少なくともすでに3頭いるという事実。80頭全てを順調に仕上げて行くことはまず無理だが、「歩留まり」をどの程度に止められるかが今後の課題になるだろう。九州と北海道とに分かれての育成は今後「トレーニングセール」での販売に切り替えられることを考えた時、いかに北海道組がハンディキャップを克服して行けるかがポイントとなるはずだ。

 さて、一通り比較展示を実施した後、隣接する1600mのダートコースにて「騎乗供覧」が行われた。これは、基本的に2頭併せで追い切り、直線2ハロンの走破タイムが計時され発表される。5月に日高で行われるトレーニングセールの際には、ハロン11秒台の時計も珍しくないくらいのハードな追い切りだが、JRA育成馬はそこまでの時計を出すことなく、抑え気味に13秒台から15秒台程度で次々に追い切られた。騎乗供覧に出走したのは56頭中36頭。残りの20頭は比較展示のみのお披露目だったわけだが、これはやはり調教進度の違いからくる措置なのかも知れない。

 ともあれ、正午過ぎに無事終了し、この後、56頭は近々中山競馬場へと移動する予定だ。中山競馬場でも当日騎乗供覧が実施され(ダートコース)、装鞍所にて比較展示された後、中央門にてセリ方式により売却される予定という。その結果如何では、今後のサラブレッド1歳市場におけるJRA育成馬購買のあり方にも影響を及ぼすのは必至で、その意味でも活発な市場になることを期待してやまない。

 なお、JRA育成馬の2歳時における成績は、平成10年から16年までの集計では、平均獲得賞金、出走回数、勝上がり率ともに全馬の平均値を上回っている由。こうした実績が果たしてセールスポイントとなるかどうか。25日の結果に注目したいと思う。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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