2017年12月02日(土) 12:00
◆テレビの競馬中継を見る、というのがフツウではなくなるかも?
先月30日、「あぁやっぱりか」というニュースが報じられました。TBSラジオがプロ野球中継から撤退したそうです。今年のシーズン早々に某関係者から「そういうことになりそうだ」と聞いていましたが、本当だったんですね。
同局が最初に中継したプロ野球の試合は、1952(昭和27)年3月12、13日の巨人・毎日定期戦(オープン戦。後楽園球場)。それから数えて65周年だった今年、「これが最後の中継」という“セレモニー”もなく、静かに歴史の幕が下ろされてしまいました。
何を隠そうこの私、もともとはラジオの野球実況がやりたくてアナウンサーを目指した人間です。もちろん、TBSのプロ野球中継「エキサイトナイター」は、時には録音までして聴いていました。「コバルトの空」という軽快なテーマソングで始まり、渡辺謙太郎さんや山田二郎さん、石井智さんといった憧れのアナウンサーが名調子を聴かせてくれる、それはもう心躍る番組でした。
当時のAMラジオは、家の中にいてもよく聞こえました。しかも、テレビからは、ラジオと同じタイミングで映像が伝わってきたんです。そこでよくやっていたのが、テレビの野球中継の音声を消してラジオの実況を聴くこと。その頃のテレビのアナウンサーには失礼ながら、のんべんだらりとした(ように聞こえた)テレビより、細かくプレーを追いながらテンポよく喋っているラジオの実況のほうが圧倒的におもしろかったからです。
まぁ大げさに言えば、私を育ててくれたTBSのプロ野球中継。ですが、確かに最近はほとんど聴かなくなっちゃいましたねぇ。今はスマホやパソコンで聴ける「radiko」やワイドFMがあるので、家の中で聴きづらいということはなくなりましたが、何よりテレビの映像と時間的なズレができちゃったのは致命的。ネットのプロ野球速報が充実してきたのも影響していると思います。
これを、テレビの競馬中継に携わるわれわれが“対岸の火事”と思っていてはいけないんでしょうね。ラジオを聴く、というのがフツウのことではなくなってしまった今、今度は、テレビを見る、というのがフツウでなくなっても、ちっとも不思議ではありません。
そうなったら、われわれの競馬中継はどうなるんでしょう? 例えばnetkeiba.comのサイトと連携して、パソコンやスマホでも見られるようにする、なんていうのはいかがですか? でも、それもアッという間に古くなってしまうかもしれませんよ。そのうち、ウエアラブル端末で映像を見て、音声認識機能を使って馬券を買う時代がやって来そうですからね。そんな時代でも必要とされるような競馬中継って、そういうものなんでしょうか?
とにもかくにも、TBSラジオのプロ野球中継終了というニュースは、1つの時代の終わりを象徴するとともに、次の時代が始まっていることを改めて教えてくれたような気がします。
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矢野吉彦
テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。
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