週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2005年04月19日(火) 10:42 0

 4月13日・14日の両日、英国のニューマーケットで行われた「タタソールズ・ブリーズアップセール」は、総売上げが前年比4.3%アップの633万3千ギニー、平均価格が前年比で9.3%アップして初めて5万ギニーの大台に乗る51,072ギニー、中間価格が前年比12.9%アップの3万5千ギニーと、すべての指標がセール歴代最高をマークする盛況に終わった。ここ数年、目に見えて上場馬の質が向上しているこの市場だが、その内容に相応しい結果がもたらされたと言えよう。

 ただし、昨年22.1%だったバイバックレートが、今年は27.9%に上昇。良質馬を集めるために、コンサイナーたちの仕入れも徐々に値の張る馬へとシフトしており、リザーヴ・プライス(最低希望販売価格)も総体的に上がりつつある。そうなると、販売希望額に届かぬ馬が増えてきてしまうのは致し方のない流れではある。だが、27.9%というのは、北米の2歳セールに比べればまだまだ健全ではあるものの、市場の構図としてはそろそろ危険水域に入りつつある数字であり、来年に向けたコンサイナーたちの仕入れが今後どう動くか、注意深く見守る必要があるように思う。

 最高価格馬は、2日目に登場した父レッドランサム・母ロジシェルの牡馬。骨格のしっかりした馬体で、公開調教での動きも上々。更に血統的にも、欧米を股にかけて芝重賞戦線で活躍したタロワが兄にいるという三拍子揃った馬で、ダーレイ・スタッド・マネージメントが27万ギニーで購買した。

 この馬を含めて、高い方から順番に3頭までが、シェイク・モハメドの子息シェイク・ラシッドが陣頭指揮をとったダーレイによる購買馬。潤沢な資金にモノを言わせた活発な購買を見せたわけだが、その煽りをモロに喰らうことになったのが、日本人購買者だった。ダーレイが買った高馬上位3頭、実はその全てにおいて、アンダービダー(最後まで競り合った人)は日本人だったのだ。

 市場への貢献という意味では大いなる存在感を示した日本人だったが、残念ながら購買頭数は、前年の13頭を大きく下回る6頭にとどまってしまった。

 だが、その6頭はいずれも粒揃い。全体で高い方から数えて5番目、日本人によると見られる購買の中では最高値となる15万ギニーで購買された母アミナタの牡馬は、馬体も良く、調教での動きも目立った好素材だ。父キングズベストは、初年度産駒から今年の1000ギニーの有力馬シャンハイリリーをはじめ複数の活躍馬を出して、おおいに注目を集めている若手種牡馬である。輸送・検疫を無事に乗り越えて、早めのデビューを期待したい1頭だ。

 12万ギニーで購買された母クレイジーフォーユーの牡馬は、期待されて種牡馬入りしながら早世し、わずか1世代しか産駒を遺せなかったチャンピオンスプリンター・モーツァルトの遺児。兄に、北米における重賞勝ち馬ヘッズウィルロールがいる。

 9万ギニーで購買された母シルヴァーパースの牡馬は、公開調教における動きが抜群に良かった1頭。父は、ロベルト系のミスターベイリーズ。日本の競馬に適性がズバリはまって、大仕事をする可能性を秘めた馬だと思う。

 6万2千ギニーで購買された父インザウイングス・母プロスコーナの牡馬も、やや小柄ながら垢抜けた好馬体が目立った馬で、調教での動きも水準以上だった。姉の子に桜花賞2着馬イブキパーシヴがいる牝系である。

 5万5千ドルで購買された父ウッドマン・母モンマインロウも、好馬体の持ち主。

 4万ギニーで購買された父グランドロッジ・母パシフィックグローヴは、2つ年上の兄にドイツの2歳G2モーリス・ラクロワ・トロフィー勝ち馬モカボラがいる。

 価格に関わらず、追いかけてみたい馬たちばかりである。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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