2017年12月12日(火) 18:00
ダークリパルサーを管理する金成調教師にインタビュー
赤見 ダークリパルサーはエスポワールシチーの下ということで注目されていますけれども、最初の頃の印象というのは?
兄のエスポワールシチーはJBCスプリントなどGI9勝(写真は2013年11月4日・JBCスプリント優勝時、撮影:高橋正和)
金成 初めて見たのがセレクトセールだったんですけど、とてもいい馬だなと感じました。オーナーが購入されて縁があってうちに来ることになって嬉しかったですね。
赤見 いい馬、というのは、具体的にどの辺りに良さを感じたんですか?
金成 いい馬の基準って人それぞれ違うと思うんですけど、ダークリパルサーに関しては欠点がなかったです。馬体の造り、品格、顔の良さ、そういうのが目立っていました。そこから順調に育ってくれて、どこか途中で一頓挫するようなこともなかったです。
ただ5月の終わり頃の生まれだったので、使いだしをどの辺りからにしようかなというのは考えました。新馬戦の時には能力があるのはわかっていて、特に何の問題もなかったので、普通に逃げて勝ったなという感じで。2戦目のオキザリス賞も本当に能力が素晴らしい馬なので、ここも勝ってくれるのではと思っていました。
赤見 直線では進路がなくなって、いったん引いて外に切り返すことになりましたが、よくそこから差し切りましたね。
金成 ただ、戸崎ジョッキーも全然慌ててなかったですし、馬にとっては逆にいい経験になったんじゃないかと思います。レースの後も何のダメージもなかったので、抽選になるかもしれないけど全日本2歳優駿へ行ってみようかということになりました。
直線では進路がなくなりながらも外に切り返し、見事な差し切り勝ち(写真は2017年11月11日・オキザリス賞優勝時、撮影:下野雄規)
赤見 エスポワールシチーは気性的に繊細で難しい部分があると言われていましたが、この仔はいかがですか?
金成 やっぱり気性の激しい部分は持っていますね。ただ、何かが手に負えないとか、競馬に向けて悪い方にいってしまうとか、そういう気の悪さではないです。調教の最初の頃は敏感なところを見せていたんですけど、その辺りのコントロールも上手くいって、おそらくはレースを使っていくたびにもっと乗りやすい馬になっていくんじゃないかなと。
赤見 現状一番の武器というのは?
金成 心肺機能が素晴らしいですし、スピードがありますよね。
赤見 今回初めての川崎、キツイコーナーになりますけれども。
金成 ここまで2回使って2連勝したからって、まだ馬が学びきったわけではないし、成長も途上の段階です。しかも距離も1ハロン延びますし、ナイターでメンバーも一気に強くなるので、初戦、2戦目で馬が覚えたことの延長線上でいい競馬ができればと思っています。何が何でもこうしたい、こういう走りをして欲しいというのではなくて、あの仔にとって一番いい流れで競馬ができれば嬉しいです。もちろん、その中で勝つことができれば最高ですけど。
赤見 今年のメンバーは例年以上に超ハイレベルになりましたね。
金成 ねぇ。揃いましたよね。ここでいい競馬が出来れば、いい指標になると思うんですよ。そういう点では楽しみですね。メンバーが揃ってない中で勝ったとしても、先々の指標にはならないですから。弱いところで勝ったってなってもね。でも今年に限ってはまったくそんなことなくて、ものすごいメンバーが揃いましたから、この中でどんな走りができるか楽しみです。
赤見 理想の展開や位置取りはありますか?
金成 コーナー4つ回って1600の馬場を上手にこなしてくれればというのが一番なので、展開や位置取りというのは特に考えていないです。あの仔自身が落ち着いて競馬ができれば。スピードがある馬で、現状まだ乗りやすくはないと思うんですよ。でもそのスピードがコントロールできるようになってくればさらに強くなると思うので、今回は落ち着いてレースができることが理想です。
赤見 こういう馬が出てくると、厩舎としても盛り上がりますね。
金成 そうですね。血統的にもエスポワールシチーの下ということで裏付けがあるし、育成段階から期待していた馬で、ここまで順調に来てくれてとても嬉しいです。ただ、5月の終わりの遅生まれなので、ムリな使い方だけはしないようにと意識しています。このまま順調に育ってくれればもっと強くなってくれると思うので、先々のことまで考えて大事に使っていきたいです。
赤見 ここまでは理想的なローテーションで進んでいますね。
金成 実は新馬を勝った後、何か月休んでも構わないと思っていたんですよ。でも思った以上に元気で、使えそうだということで2戦目を使って。その時も、年内休養でいいかなと考えていたんですが、ここでも思った以上に元気で。それで全日本へということになったので、決してローテーションが先に決まっていたわけではないんです。
馬の成長を考えたら、どこかで休みを入れて成長させてあげたいという気持ちも強いですし、今の段階でここを目指すというのではなくて、成長の中でレースに使って行けたらという想いでやっています。今は能力の高さで結果を出してくれていますが、本当に良くなって完成するのは来年、再来年だと思っています。そこまで順調に育っていけるように、厩舎一丸となって努力していきます。
順調に育っていけるように、厩舎一丸となって努力していきます(写真は2017年10月14日・新馬戦優勝時、撮影:下野雄規)
赤見 では、全日本2歳優駿へ向けて意気込みをお願いします。
金成 とても強いメンバーですが、この馬もいい状態でレースに出走できるので、応援していただけたら嬉しいです。戸崎ジョッキーが初戦も2戦目も乗って、調教でも乗って、ダークリパルサーのことをよく知っているので、この馬にとって一番いい乗り方をしてきてくれると思っています。
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常石勝義
常石勝義 1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。
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